バッタリ出会ってしまったけど、今の僕たちは普通に会話をするのも難しい状況なのだ。かといって何も話さずに別れるのも気まずいし……僕はどうすればいいんだろうか。
「えっと……こんにちは」
「こんにちは……」
とりあえず挨拶してみたけど、そこから会話が発展する事は無い。まぁそんな事分かっていた事なんだけどね……とにかく気まずいなぁ……
「何してるんだ、元希?」
「えっ? あぁ、健吾君。健吾君こそどうしたの? ここ、理事長室に向かう廊下だよ?」
健吾君に言ってから、そう言えばバエルさんはこんな場所で何をしていたんだろうと気になった。
「別に何か用事があったわけじゃないが、元希の姿が見えたから来ただけだ」
「そうなんだ……」
「最近会わなかっただろ? だから久しぶりに話でもしようかと思ったんだが、どうやらお邪魔みたいだな」
「え?」
健吾君は僕の後にいるバエルさんを見て、何やら勘違いしたらしい。
「しかし、お前も隅に置けないな。こんな綺麗な人と付き合ってるなんて」
「ち、違うよ! バエルさんは同じ寮で生活してる人で、僕なんかと付き合ってくれるわけないよ……」
バエルさんは綺麗だし、恋人を作ろうとすれば何時でも作れるだろう。それに比べて僕は、子供っぽいし何時まで経っても女の人に抱きつかれると慌てちゃうし気を失っちゃうしで、全然バエルさんと釣り合わないし……
「そうかな? 彼女、まんざらでも無いんじゃないか?」
「え?」
「だって、なんにも思って無い相手だったら、俺が元希に話しかけた時にどっかに行くだろ? でも彼女はお前を待ってる。何か用事があるようでもなさそうだし、一度じっくり話し合ったらどうだ? お前だって彼女の事、好きなんだろ?」
「僕が、バエルさんを……?」
「なんだ、お前自分の気持ちに気づいて無かったのか? どんだけ純情なんだよ……」
健吾君に呆れられたけど、僕は今そんな事を気にしてられる余裕が無かった。僕が、バエルさんを? 確かに僕はバエルさんの事は好きだ。でもそれは他の人も同じで、僕は皆の事が好きだ。バエルさんだけ特別な感情なはずがないじゃないか……
「余計な事言ったか? もし違ったら悪かったな。忘れてくれ」
それじゃあ、と言って健吾君は普通科の校舎に戻って行った。後に残されたのは自分の気持ちが分からない僕と、健吾君と何を話していたのか気になっているバエルさんだ。この状況、どうすればいいんだ……
あの後気まずいながらも一緒に帰る事にしたんだけど、帰り道の間は会話らしい会話は無かった。僕は自分の感情が特別なものなのかずっと考えていたし、バエルさんもバエルさんで何か考えている様子だった。
「主様、さっきからぼーっとして何かあったのか?」
「ちょっとね……」
「珍しい事もあるものじゃな。主様は考えを纏めるのが早い人間じゃと思っておったが、難問にでもぶち当たったのか?」
「ある意味そうかもしれないな……」
答えを探そうにも、誰かに相談する事の出来ない事だし、僕自身経験が無いから本当にそうなのか分からないのだ。何時までもバエルさんと気まずいのも放っておけないし、どうすればいいんだろうな……
「思いっ切り発散せい。そうすればすっきりするじゃろ」
「発散って言っても……何をどうすればいいの?」
「架空世界での戦闘で、自分の使える最強の魔法をぶっ放せ。そうすればすっきりするじゃろうて」
「最強の魔法……また水を召喚するの?」
「それでもよい。じゃが、お主の中には今神が二柱おるじゃろ。その力を使えばもっと強い魔法も放てるじゃろう」
無責任な事を言って、水は何処かに行ってしまった……でも、確かにすっきりはするかもしれないな……明日の授業でやってみようかな。
果たして元希君はどうするのか……