その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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今年も残りわずかですね……


積極的に

 炎さんのおかげでとりあえずモヤモヤは解消したけど、根本的な問題は何一つ解決していないのだ。つまり、テントに戻れば僕とバエルさんの二人っきりの空間なわけで、気まずい空気が漂っているのだ。

 

「あっ、お帰りなさい……」

 

「た、ただいま……」

 

「遅かったですね」

 

「ちょっと炎さんと走ってたので」

 

「走って?」

 

「はい。ちょっと悩み事で相談したら何故か走る事になりまして……ちょっと汗を掻いたのでお風呂に入って来ます」

 

 

 着替えを持ってすぐさまテントから出ようとしたのだが、何故かバエルさんに腕を掴まれてしまった。

 

「えっと……何でしょうか?」

 

「早蕨荘のルール、覚えてますよね?」

 

「……せっかく炎さんたちを撒いたのに」

 

 

 ちょっと気になる事があるからと言って、炎さんの誘いは何とか回避したのだけども、同じテントで生活しているバエルさんには何か良い言い訳が使えるわけも無く、そのままお風呂に向かう事になった。もちろん、途中で他の人も誘わなければとバエルさんが言い出したおかげで、炎さんたちとも一緒に入る事になったのだが……

 

「それで元希、何か気になる事があったんだろ? 解決したのか?」

 

「うん、それはまぁ……リンとシンが管理してた土地の状況をね。僕の中にいるから強力な加護は無いけど、安定してたから良かったよ」

 

「そう言えば、最近水様も忙しそうにしていますが、それもリンさんとシンさんの影響ですの?」

 

「うん。水神である水に管理してもらった方が、水脈に関しては良いし、暇を持て余してたからね」

 

 

 リンが僕の中に入ってから、水は何処か退屈そうにしていたのだ。だからリンに提案され僕が打診したところ、水は喜んでその仕事を引き受けてくれたのだ。まぁ、二人が管理してた場所以上の水脈を管理しようとして、少しその土地神様とイザコザがあったらしいけど、今は穏便に領土を守っているらしい。

 

「それにしても元希、お前結構体力あったんだな。あれだけ走ってへろへろだったのに、少し休んだだけでそんな調査をするなんて」

 

「さすがに現地には行ってないよ。式紙を飛ばして確認しただけ」

 

「元希さんは式紙を使ってその状況を詳しく知る事が出来るんですか? 目に見える事は確かに調べられますが、加護が安定しているなんて事、実際にその場に行かなければ分からないと思いますけど」

 

「ちょっと細工をしただけですよ、美土さん。式紙に意識を持たせ、その感覚を僕に繋がるように魔法を掛けただけです。普通のままだったら確かに無理ですよ」

 

 

 このやり方は涼子さんから教わり、リーナさんが僕の特訓に付き合ってくれた成果なのだ。最近漸く感覚を同調する事が出来るるようになり、遠くの調査でも簡単にこなせるようになって来たのだ。その所為で、恵理さんに仕事を頼まれる回数が増えてきているのも確かだが……

 

「よーし! 元希、洗ってやるからこっちに来い」

 

「自分で洗えますって……」

 

「毎回炎なのはズルイわよね。偶には私も元希君の事洗いたいわよ」

 

「秋穂は色々と元希君にくっついてるじゃない。ボクたちの方が接触が少ない気もするけど」

 

「そんな事ないんじゃない? 私は別のクラスだし、元希君との接触は御影たちの方が多いって、絶対」

 

 

 そんな感じで誰が僕の身体を洗うかで揉めはじめたけど、その間バエルさんは一切僕の事を見ないようにしていた。多分気まずいと思ってるのは僕よりバエルさんの方なんだろうな……

 

「よっし! こうなったらじゃんけんで勝負だ! もちろん全員参加の一回勝負。誰が勝ってもうらみっこなしで」

 

 

 僕の意思は一切無視して、全員がじゃんけんに参加している。その中にバエルさんもいたのは意外だと思った……だって、目を合わせられない程気まずいと感じてるのに、まさか僕の事を洗おうなんて思うとは思わなかったから……結果、秋穂さんが勝利したけど、もしバエルさんが勝ってたらどうなったんだろうな……




やっぱり大人気の元希君でした……

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