モヤモヤした気分は続いているけど、前よりかは楽になって来たし、それは数値にも表れているようだった。
「元希君もアレクサンドロフさんも徐々にだけど不振から脱してるようね。でも、あれだけの数値を出していた二人がこれ程までに数値を落とすなんて、何があったの?」
モニターを見ながら訪ねてくる恵理さんに、僕とバエルさんは苦笑いを浮かべて誤魔化した。まさか告白紛いな事をしたり、キスをした所為で気まずくなっているなんて言ったらどんな反応をするかは火を見るより明らかだから……
「まぁ身体的な不調じゃなさそうだから良いけど、あんまり無理はしない事。特に元希君は世界中から注目されてるんだから」
「そうなんですか?」
そんなに注目されてる自覚は無いんだけどな……そもそも何で僕が? 炎さんたちの方が納得出来るんだけどな……
「自覚していないんですか? 元希君は全属性魔法師なんですから、否が応でも注目されるんですよ。そして、心無い誹謗中傷や化け物を見るような目で見られる事もしばしばあるので覚悟はしておいてくださいね」
「涼子ちゃん、ネガティブな方だけ言わないで、ちゃんとポジティブな方も言わなきゃ」
「何かありましたっけ? 税金を納めなくても良い事くらいしかないと思いますけど」
そう言えば全属性魔法師は何処の国にも属していない事になるから、税金を納める国が無いんだ……でも、基本的に日本で活動してるんだから日本に納めるんじゃないのかな?
「あれは、日本政府が私たちのお金は必要ないとか言って突っぱねたからでしょ? 強がっちゃってバカみたいよね」
「報酬を換金するのも大変ですし、ポジティブと言われてもすぐには……入国審査が要らないとか?」
「何処にも属してない代わりに何処にでもいれるものね……でも、三日以上は不法滞在だって怒られるわよ?」
「えっ、でも日本では普通に生活してますよね?」
三日どころでは無く、僕は恵理さんや涼子さんと半年近く一緒に生活しているのだ。不法滞在になるならとっくの昔に言われてい無きゃおかしいんじゃ……
「今の身分は霊峰学園理事長と教師だから、仮の戸籍が用意されてるのよ。一歩でも学園から出れば通用しない戸籍だけどね」
「だから学園の敷地内で生活する分には問題無いんですよ。あの雑木林も、その目的で学園所有にしたんですから」
まさか、そんな理由があったなんて……でも、色々と大変なんだと言う事がハッキリと分かる話だった。
「ちなみに、私たちよりリーナの方が立場的には危ういわね。何せアメリカ支部で爆破事件を起こし、そのまま日本に逃げてきたんだから」
「正規の手続きもしてませんし、密入国者ですからね、今のリーナは」
「あの、それって普通にマズイのでは……」
今まで黙って話を聞いていたバエルさんが、さすがに耐えられなくなって口を開いた。というか、口を挿まずにはいられなくなったのだろう……僕も聞こうと思ってたし。
「私たちの知り合いだからね。何でもアリって思われてる節が多々あるから」
「霊峰学園は何処の国も介入し辛いから問題ないですよ。あの禿げ親父が裏で何かしなければ、ですけどね」
「いっそ更迭しちゃおうかしら? 代わりにリーナを副校長に……」
「さすがにそれは……だいたい更迭の理由はなんです?」
「理事長に楯ついたから」
「横暴ですよ」
目の前で繰り広げられる、物騒極まりない会話に、僕もバエルさんも互いに気まずさを抱えている事など忘れ目を合わせて震えあった。色々と仲良くしてもらっているので忘れがちだったけど、この二人は学園的にも世間的にも凄い人で、今話しあってるような事でも簡単に出来る立場の人だったんだ……これからは怒らせないように一層の注意が必要だと言う事を忘れないでおこう……
便利なのか不便なのか……でも、税金を払わなくて良いのは羨ましいかも……