放課後になり、自主特訓を開始する為に僕たちは体育館に集合した。恵理さんや涼子さんの許可はもらっているので、いくらでも仮想世界で訓練する事が出来る。まぁ、体力と魔力が続く限り、なんだけどね。
「それじゃあ機械の操作は私がするから、元希ちゃんたちは存分に訓練しちゃってね」
「すみません、リーナさん。わざわざお付き合い頂いて……」
「いいの、いいの。どうせ暇なんだし」
リーナさんの今の立場は非常に危ういので、あまり表の仕事は出来ないらしいのだ。だからこうして自主訓練だったり内密の仕事だったりが主な仕事になっているらしいのだけども、学校に来る内密の仕事って何だろう?
「それじゃあ、終わったら声を掛けてね」
その言葉が合図だったのか、僕たちは仮想世界へと飛ばされた。何度やっても空間を跳び越えるこのタイミングは緊張するなぁ……
「それじゃあまず、炎さんが訓練してた防御陣を見せて。それを見てから改良案を考えるからさ」
「分かったぜ! それじゃあ水奈は向こうな」
「分かりましたわ。それでは、行きますわよ!」
水奈さんの攻撃が炎さんを襲う。ギリギリまで引きつけてから、炎さんは地面から岩を呼び出し自分の周りを囲った。
「なるほど……水奈さん、ちょっと良いかな?」
「何でしょうか、元希様」
「えっとね……ゴニョゴニョ」
「おーい! 何を話してるんだよ、元希」
「その陣の欠陥を身を持って体験してもらった方がいいと思って」
炎さんに返事をしてから、僕は水奈さんにもう一度攻撃してもらった。
「水奈の攻撃なら二発だろうが何発だろうが……ヘブッ!?」
「頭上がガラ空きでしてよ」
「なるほど……上は警戒してなかったな」
正面や側面、背面は確かにガード出来ているけども、さすがに上までは考えが回らなかったらしい。高度な魔法師でもない限り、放った魔法の軌道を途中で変更する事は出来ないから仕方ないかもしれないけど、ここにいる全員がそれをする事が出来るのだ。
「でも元希、どうやって頭上まで守るんだ? 岩を傾けさせて蓋をしても、今度は息が苦しくなるんじゃないか?」
「何で密封しようと思ったの? 別に隙間を作ればいいんじゃないの?」
「違うよ、秋穂さん。隙間から魔法を中に入れることだって出来るんだ。こうやってね」
「ヘバァ!? 何で元希まで攻撃するんだよ」
一見頑丈に見える炎さんの陣だが、所々に隙間が見て取れる。その隙間に魔法を潜り込ませ、中で一ヶ所に纏めて攻撃してみせた。これもある程度の練習で出来る事なので、おそらく二、三日でここにいる全員が修得出来るだろう。
「なるほど……じゃあ重ね掛けして隙間をズラすのも意味は無いのね」
「潜り込ませるのに時間がかかるから有効ではあるけど、完全には防げないからね」
「じゃあどうするの? 元希君は何かアイディアがあるの?」
「一人じゃなきゃ大丈夫だけど……美土さん」
僕は美土さんに耳打ちをして、炎さんの陣の中に入ってもらう。本当は一人で全部出来ればいいんだけど、それは全属性魔法師にしか出来ない事だ。岩と風は属性が違うし、二つ同時に操るのはやっぱり無理なのだから。
「準備出来ました」
「分かった。水奈さん、もう一回頭上を狙って」
「畏まりましたわ!」
今回の岩の陣には隙間は無く、だが頭上は開いたままだ。もちろん炎さん一人なら同じことの繰り返しなのだが、頭上は美土さんの担当にしたのだ。
「水が……跳ね返されましたわ!?」
「頭上に風の陣を張ってもらったんだ。これなら水は入り込めない」
「では氷で!」
「細切れにされちゃうから、精々冷たいと思わせるだけだよ。もちろん、あの陣で完成ってわけじゃないけどね」
今のはあくまでも水と氷に対する陣。他の魔法なら通過する事が可能なのだから……
ちょっと炎が可哀想……