その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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今年最後の投稿です


防御陣 その2

 属性ごとに陣を作っておくのは悪い事では無い。だけど、一人ですべてを賄いきれないとなると、集団行動が必須になってくる。幸いな事に、ここには二種類の魔法を使い分ける事が出来る魔法師が四人と、一種類ながらも強力な魔法を放つ事が出来る魔法師が二人いる。だからこのペアで行動をすれば、とりあえず全ての属性に対する防御陣を作る事は可能なのだ。

 

「次は炎と岩に対する陣かな。中心は水奈さんで、補佐は御影さんお願い」

 

「炎は水で防げますが、岩はどうやって防ぐのでしょうか? 氷では砕けてしまいますわ」

 

「だから御影さんの補佐が必要なんだ。氷に闇と光を纏わせて岩に対する強度を上げる。もちろんそれだけじゃ砕けるかもしれないから、水奈さんは氷の強度を最大まで高めるように集中して」

 

「元希君、ちょっと聞きたいんだけど」

 

 

 御影さんに袖をひっぱられ、僕は御影さんと一緒に皆から少し離れた場所に移動した。

 

「なに?」

 

「岩に対して、何でボクなの? 美土の方が有効だと思うんだけど」

 

「岩は光を浴び続けると少しずつ脆くなる。御影さんの威力なら結構強度を低くする事が出来る。そして闇だけど、別次元に飛ばせれば一番いいんだろうけどもそれは難しいから、次元の狭間を作り出して岩を少しずつ削るんだ。そうすれば氷の陣にぶつかる時には脆く、そして小さくなってるだろうから」

 

「ボクに出来るかな……」

 

「出来なくても、それを出来るようにするための特訓だよ。最初から出来なくても大丈夫だから」

 

 

 御影さんなら問題無く出来るだろうけども、何事においても完璧なんて存在しない。何処かしらに綻びが出来、そこから破綻する事が多いのだ。だから絶対などという言葉は使わずに御影さんを励ましたのだ。

 

『意外と現実主義なのですね、元希は』

 

『つまらない生き方してるんだな』

 

「(別にいいでしょ。現実を見て生きてかなきゃ)」

 

 

 この年でつまらない考え方だと僕も思うけど、そうでもしなきゃ生きていけなかったんだから……

 

「それじゃあ早速攻撃するぜ。さっきのお返し、受けやがれ!」

 

「いきなり全力ですか……よっぽど水を浴びたのが腹に立ったのでしょうね」

 

「うん……僕もぶつけたから、後で怒られるかも」

 

 

 炎さんが最初から全力なのを見て、僕は少し恐怖した。いくら隙間の恐ろしさを教える為とはいえ、あれはやり過ぎたかもしれないな……

 

「ちっ、さすが元希考案の策だな。なかなか破れない」

 

「元希さん、わたしの目の錯覚じゃなければ、炎の岩が小さくなっていっているような気がするのですが」

 

「あれは御影さんの魔法だよ。光を浴びせ強度を落とし、闇で次元の狭間を作ってそこで削ってるんだ。最大のままで氷にぶつかれば、どうしても岩の方に歩があるからね」

 

 

 相手の方が強いのなら、その力を削ぎ落とせばいい。それがこの陣の最大のポイントだ。大きさでも強度でも、岩に勝てる属性は無い。水や風で押し返したりすればいいのかもしれないけども、それはかなりの体力と魔力を消耗する。それだったら相手の力を削いで軽くする方が楽なのだ。もちろん、炎さんの力がより強大になれば使えなくなるかもしれないけどね。

 

「これなら岩属性の魔物が現れても、それなりに時間を稼げますね」

 

「その間に攻撃して、相手を弱らせる事が可能でしょうね。さすが元希さん、考えていますね」

 

「うん……でも一番は、こんなものを使わなくても良い世界になる事なんだけどね」

 

 

 常に魔物の恐怖と隣り合わせではなく、魔物など気にしならない世の中になるのが一番なのだ。でも、それは不可能に近いので、僕はなるべく皆が傷付かないように陣を考案しているのだから。




今年一年、お付き合いいただきありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

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