一休みを終えて探索を再開した僕たちは、見た事も無い足跡を見つけた。
「これって何の動物の足跡だ?」
「さぁ? 見た事ありませんわね」
「四足歩行である事は間違いなさそうですが、この山にこんな大きな足跡を残す動物などいましたっけ?」
「ボクは知らない。秋穂やバエルさんは知ってる?」
「私は知らないわ」
「私も、日本に来たのは最近ですし」
そう言えばそうだったね……結構長い時間一緒にいると思ってたけど、僕とバエルさんは五人と知り合ったのは最近なのだ。僕は半年くらい、バエルさんはそれより一ヶ月短いくらい、それくらい密度の濃い時間を過ごしてきたんだろうな。
「元希、何か気配はある?」
「ううん、魔物の気配も動物の気配も無い……でも、残留気配があちらこちらにあるのは気になる」
「ボクも気になってる。残留気配は沢山あるのに、半径一キロ以内に生体反応が無い」
何か嫌な予感がしてきたけど、とりあえず緊急の事態では無いので冷静に気配を探る。もし探知能力をすり抜ける程の隠密性を持った魔物だとしたら、かなりピンチなのかもしれないけど……
「なんか曇ってきたな」
「山の天気は変わり易いですからね。美土さん、雨が降り始める前にお願いしますわね」
「風の結界を張っておきます。これで濡れる事はありません」
「雨か……魔物と何か関係があるのかな」
いくら山の天気が変わり易いとはいえ、この辺りだけに雨雲が掛かるなんておかしい気もする。向こうの方には雲ひとつない青空が広がっているのだから、自然現象としたら不自然な点がいくつもある。
「もしかしたらアメフラシかもね」
「雨を降らすだけの魔物?」
「人間には無害だけど、この辺り一帯の生物からしたら有害かな。雑食で何でも食べるし」
「だから動物の気配が無いの?」
「だと思うけど……アメフラシって足、無かった気がするんだよね」
さっきの足跡が魔物のだとするならば、アメフラシの他にももう一匹以上魔物が存在するという事になる。
「とりあえずはアメフラシを探そうぜ。この山の生物が全滅する前に対処しないと、山から下りてくるかもしれないし」
「そうですわね。アメフラシなら水を辿れば見つかりますわ。雨雲から気配を辿ってみますわ」
「お願い。僕と御影さんは別の魔物を探してみるよ」
御影さんに近くを、僕は遠くまで気配を広げて存在を探る。かなり奥の方に洞穴があるな……その中が入り組んでて気配を掴むのが難しい……
「いましたわ、アメフラシ。あの大木の下ですわ」
「結構遠いな……とりあえずアメフラシは退治しておこうぜ」
「まって。その近くに洞穴があるんだけど、その中から嫌な気配がするんだ。アメフラシだけだと思わない方がいいかも」
「分かりました。それではわたしと秋穂でアメフラシ退治を担当しますので、他の四人はもう一匹いると思われる魔物に備えてください」
美土さんの作戦に全員頷いて了解を示し、とりあえずアメフラシを退治する為に山を登る。登っている間ずっと雨に降られていたのは、アメフラシが危険を感じ取って僕たちを追い返そうとしたからだろうな。
「子供のアメフラシだね」
「親がいるのでしょうか?」
「近くには気配が無いし、あのアメフラシからさっきまでの残留気配の持ち主の気配が漂ってる。きっと食べられた動物たちの怨念かも」
「怖い話は止めてよね。じゃあ美土、手筈通りに」
左右に分かれて美土さんと秋穂さんはアメフラシ退治を開始する。僕たちはアメフラシに意識を向けながらも、洞穴の中の気配を探っていたのだった。
普通に優秀な人が多い世代だな……