その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

154 / 245
最近また寝不足に陥ってる気が……


洞穴の探索

 アメフラシは子供だった為にすぐに片付いた。とはいっても報告の為に捕獲して、生態調査などを行うだろうと考えて生け捕りにしたんだけどね。

 

「随分とあっさり捕まえられましたね」

 

「子供だし、二人の魔力に対抗しうる力は持ってないみたいだからね」

 

 

 転送魔法で恵理さんたちにアメフラシを届け、受け取りの返事を貰ってから僕と御影さんは洞穴の中に意識を集中させる。中から何かの気配は感じるのだが、それが何なのか、また何処にいるのかが上手く掴めないのだ。

 

「やっぱり中には行って探るしかないのかな」

 

「ですが炎さん。敵の陣地かもしれない場所に足を踏み入れるのは避けるべきだと思いますわ」

 

「わたしも水奈の考えに賛成です。中がどうなっているのか分からない状況で、しかもプロの戦闘魔法師がいないんですから、無理に押しいる必要は無いと思います」

 

「でも、日本支部の人たちは調査すらしないんでしょ? 私たちである程度調べて、問題が無い事を証明しないと町の人たちが安心出来ないと思うけど」

 

 

 この山の近くには町が存在していて、霊峰学園側で農業などをしている人たちがこの山を通るのだ。もし危険な魔物だった場合を考えて迂回路を通っているらしいのだが、それはかなりの遠回りになるのだ。出来る事ならこの道を使いたいと要望があるので、出来る限り調べる義務が僕たちにはあるのだ。

 

「入口まで行って、そこから気配を探ろう。僕と御影さんは全魔力を探索に使うから、みんなは護衛をお願い。多分襲われる事は無いと思うけどね」

 

 

 入口付近に魔物がいるのなら、さすがに気配を掴めるだろう。上級モンスターなら兎も角、確認されているのは下級モンスターなのだ。気配を偽るなどという高等テクニックは持ち合わせていないと思う。僕の知る限りでは、そんなテクニックを持った下級モンスターはいなかったし。

 

「式紙で探れないのか?」

 

「全体図が分かれば可能だけど、地図を作りながら探すのは効率が悪すぎる。最悪魔力が枯渇しちゃうかもしれない」

 

 

 この洞穴が物凄く広くて、そしてかなり入り組んでいたのならば、探索と地図作りに集中しなければいけなくなるので、式紙に送る魔力は相当必要になる。そして全て調べ終わった頃には、僕の魔力は殆ど無くなっている事だろう。

 

「一応地図は作るけど、式紙じゃなく自分の意識を広げて作るよ」

 

 

 影を広げるだけなら、それ程負担は大きく無い。限界は存在するけど、最大距離まで影を伸ばしたとしても、式紙を使った探索より魔力消費は抑えられる。そしてこのやり方なら御影さんと半分こで済むので、更に魔力消費を抑えられるのだ。

 

「じゃあボクは右側に影を広げるから、元希君は左側をお願い」

 

「分かった。もし気配を掴んだら教えてね。そっちに影を伸ばして敵を抑えつけるから」

 

「分かってる」

 

 

 御影さんと二人で洞穴の中に影を伸ばし、そして捜索していく。なかなかに入り組んでおり、影の捜索とはいえ疲れそうな洞穴の作りだ。

 

「あたしたちは待つしか出来ないからな~。その辺を探索でもするか?」

 

「気配は無いとはいえ安全とは言えません。止めておきましょう」

 

「炎さんは落ち着くと言う事を覚えた方がよさそうですね」

 

「炎が落ち着く? 多分無理だと思うけど」

 

「皆さん、元希さんと御影さんの集中の妨げになりますので、もう少しお静かに」

 

 

 バエルさんのツッコミで全員が口に指を当てて黙った。別に妨害にはならないけど、確かに気になって集中出来なくなりそうな感じはあったので、バエルさんのツッコミは僕と御影さんにとって大いにありがたいものだった。




このメンバーで一番冷静なのってバエルさんになりつつある気が……美土とか秋穂とかも悪乗りを始めてるし……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。