その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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意外と凄いヤツが……


洞穴の奥に…

 かなり広い範囲に影を広げたが、未だにもう一体のモンスターの気配を掴めない。洞穴かと思って油断したけど、かなり広いんだな……

 

「かなり入り組んでてやり難い……元希君、そっちにはいない?」

 

「今のところは見つけて無いよ。でも、何となくだけど魔法の気配が濃くなってるよ」

 

 

 奥の方に進むにつれて、強い魔力反応が返ってくる。もしかしたら中級以上のモンスターが巣食っているのかもしれない。

 

「……っ!」

 

「御影さん?」

 

「ご、ゴメン……ボクの力じゃこれ以上は探れない」

 

「限界?」

 

「ちょっと厳しいかもしれないから……」

 

 

 魔法の気配に触れて、一気に消耗したんだろうな。御影さんはその場に膝を付いて肩で息をし始める。

 

「でも、日本支部の人たちが危険は無いって判断したのなら、絶対に初級だと思ったんだけどな……」

 

「意外とテキトーだもんな、あの連中は」

 

「炎さん、口が悪いですわよ」

 

 

 水奈さんのツッコミに心の中で同意して、僕は更に置くまで影を伸ばす。ここから先は細心の注意を払わないと、僕まで気配に呑まれちゃうからな……

 

「……いた。でも、これは……」

 

「元希様?」

 

「いや、野生じゃないのかもしれない……これなら日本支部の人たちが対処しないのにも納得が出来るけど……」

 

「なんだよ元希! アタシたちにも教えろよ!」

 

 

 僕が呟いている事が気になるようで、炎さんたちが全員僕に視線を向けている。そして炎さんは我慢出来ないのか僕の身体をぐらぐらと揺らしている。

 

「お、教えるから止めて……」

 

 

 炎さんにお願いして揺らすのを止めてもらい、僕はもう一度確認の為に一気にその気配まで影を伸ばして確信を得た。

 

「人工モンスターだ、奥にいるのは」

 

「人工モンスター? それって各国の魔法協会が開発しているっていう、モンスターに対抗する為のモンスターだよな?」

 

「ですが、何故こんな場所に?」

 

「多分だけど、日本支部で研究開発していたモンスターが逃げ出して、この洞穴に住み着いたんだと思う。アメフラシはその人工モンスターの魔力に中てられてここに現れたんだと思うよ」

 

「じゃあ、ここら一帯の生物が消えたのは、突き詰めれば日本支部の失態が原因なのですか?」

 

 

 美土さんの質問に、僕は頷いて肯定した。アメフラシがここら一帯の生物を食べ尽くしたのも、言ってしまえば人工モンスターを逃がした日本支部の人たちが原因だ。直接アメフラシを呼び寄せたわけではないけども、逃がした人工モンスターを放置し続けたんだから、そう言いきってしまっても差支えないだろう。

 

「どうしますか? 退治します?」

 

「気配の限りでは中級以上だし、僕たちが手を出していい問題なのかもわからないし……」

 

「理事長先生に確認すればいいんだな? ちょっと待ってろ」

 

 

 そう言って炎さんが携帯を取り出して恵理さんに電話する……あれ? あの携帯って僕のじゃ……

 

「何で炎さんが僕の携帯を持ってるの?」

 

「さっき借りたんだよ。元希のは特注品で、山奥でも電波が届くから」

 

「何時の間に……」

 

 

 僕は貸した覚えが無いんだけどな……まぁ良いか。

 

「向こうも僕たちには気付いてるけど、特に何かしてくる気配は――ッ! 気配が変わった! 来るよ!」

 

 

 入り組んでいるから今すぐに、というわけではないが、一応の臨戦態勢を取っておく必要がある。炎さんが指でOKサインをしているのを確認して、僕たちは人工モンスター討伐に挑むのであった。それにしても、日本支部が人工モンスターを完成させてたなんて……意外と優秀な人たちが揃ってるのかな?




手を出さなかったのは自分たちの失態を隠す為……

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