人工モンスターも僕たちの気配に気づいていたのだけども、本格的に僕たちに近づいて来るようなので一応の覚悟は決めた。どの程度の強さかもわからないのでどれくらいの覚悟が必要になるのかもわからないけど、とりあえず中級モンスターと対峙する時くらいの覚悟は決めたつもりだ。
「随分と入り組んでるなぁ……元希、気配はどっちだ?」
「炎さん、声が大きいですわ。反響して五月蠅いです」
「ちょっと待って……」
至近距離ならそれ程魔力も必要ないだろうし、念話を全員に繋ぐ事にした。
『これで聞こえる? 会話は出来る限りこっちでしよう』
『おー、頭の中に元希の声が直接聞こえるぞ』
『念話ですか。便利ですね』
『射程が短いのが難点だけどね』
例えばここから恵理さんたちまで繋げと言われても、不可能ではないかもしれないが数秒話すだけで魔力が枯渇するかもしれない。それだけ燃費が悪いのだ。
『それで元希、その人工モンスターはどっちだ?』
『えっと……右側に気配がある。でも、入り組んでるから必ずしも右側から出てくるとは言えないんだよね……』
『御影さんも気配は掴めてますの?』
『大丈夫だけど、さすがにこの気は厳しい……元希君、悪いけどボクは足下を照らす事に集中させてもらうね』
人工の為、普通のモンスターより殺気が濃いのだ。御影さんはその殺気に耐えられなくて気配を探る事を止めた。
『元希君だけに頼るのも悪い気がするけど、御影しか気配を探れないしね』
『私たちは戦闘の際に元希さんに負担をかけないようにしましょう』
秋穂さんとバエルさんがそういうと、残りの四人が頷いて答えた。
『そろそろ中間点かな……向こうも僕たちの気配を感じ取って慎重に動いてるみたい』
『思いっ切り突っ込んで来てくれた方が楽だったんだがなぁ』
『そんな考え無しなモンスターだったら、今頃この辺り一帯は何も残ってませんわ』
『仮にも日本政府が造った物だから、そこまで無鉄砲では無いと思います』
『水奈も美土も冷静だな。これから戦うってのに』
念話の欠点というか微妙なところは、他人の会話も聞こえちゃうところだよな……複数で繋ぐと自分に関係ない会話まで聞こえてきちゃうからな……まぁまったくの無関係な会話じゃないだけマシなのかもしれないけど。
『ん? ……気配が変わった?』
『本当?』
『うん、殺気じゃ無くて純粋な興味に変わった感じがする』
自分を捕えに来た日本政府の人間では無いと気付いたのだろうか。それとも、僕たちを油断させて――というやつだろうか? とりあえず濃い殺気から解放されたので良かったけど。
『うーん……とりあえずは危険はなさそうだけど、一応姿は確認しておかないとなぁ……』
『話が分かる相手なのか?』
『人工モンスターだからね。一応話は分かると思うよ。話せるかは知らないけど』
そもそも人工モンスターについてはどの国も研究を進めている最中なのだ。話せるという説もあれば、人の心が読めるとかいう説もある。だから僕も実際に見るまで話せるのかどうかも分からないのだ。
『元希でも知らない事があるんだな』
『当たり前でしょ。僕だってみんなと同じ高校生なんだから』
まして去年まで田舎で暮らしていたのだから、知識は他の人より乏しいはずなのだ。霊峰学園の図書館にある資料を片っ端から読み漁り得た知識だから、最新のものはあまり持ち合わせていない。だから僕は日本政府が人工モンスターを完成させていた事すら知らなかったのだ。
天才ではなく秀才の元希君でした。