キマイラを学園に転送して、僕は一時的に不安定になったこの土地を守護する為の魔法を、リンとシンに頼む事にした。
『それは別にかまわねぇけどよ、お前の負担が大きいぜ?』
『元希は優しいですからね。なるべく負担のかからないようにこの愚弟に上手い事やらせます』
『姉さま、さすがにそれは俺の負担が……』
『わたしの言う事に逆らうと?』
リンの威圧感が僕にも伝わって来た。僕でもビックリするくらいだから、シンはきっと震えているだろうな……
『とりあえずはやってみるが、負担を感じても勘弁しろよな』
「(わざわざごめんね。一時的な物で良いから)」
シンにお礼を言って、僕は身体をシンに明け渡した。
「やれやれ、面倒な事ばっか圧し付けやがってよ……」
『何だか僕の身体じゃないみたいだね。シンが喋ると』
「元希、ついに反抗期か?」
「あっ? 今の俺は元希じゃねぇよ。聞いてねぇのか? コイツの身体で回復してる途中の土地神の一柱、シン様だぜ」
何だかおかしな気分だけど、間違いなく僕の声だ。それなのに喋り方だけでこうも印象が変わるんだな……
「ワイルドな元希様……ありですね!」
「水奈さん、おかしなテンションになってますよ?」
「はっ!」
水奈さんがちょっとおかしい反応をしたけど、他の人はおおむね受け容れてくれたらしい。
「さっさと結界張って帰るぞ。範囲はこの山一帯で良いんだな?」
『うん、お願いします』
『くれぐれも元希の身体に負担のかからないようにするのですよ、愚弟』
「分かってますよ、姉さま……少しは俺を信用してくださいって」
涙目になりかけのシンだったが、しっかりと結界を張ってくれた。これなら元の主が戻ってくる間くらいは持つだろう。
『シン、ありがとう』
「ふん! お前の為にやったわけじゃねぇよ」
お礼を言ったら若干照れた顔でそう言われた。もしかして、シンもツンデレなのかな?
シンから身体を明け渡してもらって、僕は霊峰学園まで戻って来た。魔法を使ったダメージは、どうやら僕の身体にそれ程負担にならなかったようだ。
「お帰りなさい。一応キマイラから事情は聞いてるけど、報告の為に元希君と岩崎さんは理事長室に来て頂戴ね」
「僕は構いませんけど……何故炎さんも?」
何時もなら僕一人が呼ばれる場面だけど、今日は何故か炎さんも呼ばれている。
「キマイラが炎さんの事を気にいってるようでね。可能なら使い魔にしてほしいって」
「使い魔? あのおっさんを?」
仮にも人工モンスターに対しておっさんとは、炎さんは随分とおおらかな人なんだなと改めて思わされる。
「あと、アメフラシは水がきっちり指導するそうよ。それで元希君の新たな使い魔として契約させるって」
「僕がいない間に勝手に決めないでほしいよ……まぁ、アメフラシがそれで納得してるのであれば、僕は構いませんけど」
流れ的には水奈さんの使い魔になるんじゃないのかな? キマイラが炎さんの使い魔になるのであれば……
「それじゃあ、他のみんなはご苦労様でした。何時もの場所に御馳走を用意してあるから、先に食べてて良いわよ」
「あっ、ズリィ! ちゃんとアタシたちの分も取っておけよな!」
「炎さんじゃないんですから、見境なく食べたりしませんよ」
水奈さんのツッコミに、他のみんなも頷いて同意した。何となく同意し難いような気もしたけど、どうやらそれは僕だけだったようだ……
「それにしても使い魔か……何だか一人前になった気分だな」
「そういうものなの?」
既に水、そしてリンとシンの姉弟が使い魔としている僕は、炎さんの気持ちが分からなかったのだ。
このコンビ、結構好きです。