その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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いよいよ炎にも使い魔が……


炎の使い魔

 キマイラを学園に転送して、僕は一時的に不安定になったこの土地を守護する為の魔法を、リンとシンに頼む事にした。

 

『それは別にかまわねぇけどよ、お前の負担が大きいぜ?』

 

『元希は優しいですからね。なるべく負担のかからないようにこの愚弟に上手い事やらせます』

 

『姉さま、さすがにそれは俺の負担が……』

 

『わたしの言う事に逆らうと?』

 

 

 リンの威圧感が僕にも伝わって来た。僕でもビックリするくらいだから、シンはきっと震えているだろうな……

 

『とりあえずはやってみるが、負担を感じても勘弁しろよな』

 

「(わざわざごめんね。一時的な物で良いから)」

 

 

 シンにお礼を言って、僕は身体をシンに明け渡した。

 

「やれやれ、面倒な事ばっか圧し付けやがってよ……」

 

『何だか僕の身体じゃないみたいだね。シンが喋ると』

 

「元希、ついに反抗期か?」

 

「あっ? 今の俺は元希じゃねぇよ。聞いてねぇのか? コイツの身体で回復してる途中の土地神の一柱、シン様だぜ」

 

 

 何だかおかしな気分だけど、間違いなく僕の声だ。それなのに喋り方だけでこうも印象が変わるんだな……

 

「ワイルドな元希様……ありですね!」

 

「水奈さん、おかしなテンションになってますよ?」

 

「はっ!」

 

 

 水奈さんがちょっとおかしい反応をしたけど、他の人はおおむね受け容れてくれたらしい。

 

「さっさと結界張って帰るぞ。範囲はこの山一帯で良いんだな?」

 

『うん、お願いします』

 

『くれぐれも元希の身体に負担のかからないようにするのですよ、愚弟』

 

「分かってますよ、姉さま……少しは俺を信用してくださいって」

 

 

 涙目になりかけのシンだったが、しっかりと結界を張ってくれた。これなら元の主が戻ってくる間くらいは持つだろう。

 

『シン、ありがとう』

 

「ふん! お前の為にやったわけじゃねぇよ」

 

 

 お礼を言ったら若干照れた顔でそう言われた。もしかして、シンもツンデレなのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シンから身体を明け渡してもらって、僕は霊峰学園まで戻って来た。魔法を使ったダメージは、どうやら僕の身体にそれ程負担にならなかったようだ。

 

「お帰りなさい。一応キマイラから事情は聞いてるけど、報告の為に元希君と岩崎さんは理事長室に来て頂戴ね」

 

「僕は構いませんけど……何故炎さんも?」

 

 

 何時もなら僕一人が呼ばれる場面だけど、今日は何故か炎さんも呼ばれている。

 

「キマイラが炎さんの事を気にいってるようでね。可能なら使い魔にしてほしいって」

 

「使い魔? あのおっさんを?」

 

 

 仮にも人工モンスターに対しておっさんとは、炎さんは随分とおおらかな人なんだなと改めて思わされる。

 

「あと、アメフラシは水がきっちり指導するそうよ。それで元希君の新たな使い魔として契約させるって」

 

「僕がいない間に勝手に決めないでほしいよ……まぁ、アメフラシがそれで納得してるのであれば、僕は構いませんけど」

 

 

 流れ的には水奈さんの使い魔になるんじゃないのかな? キマイラが炎さんの使い魔になるのであれば……

 

「それじゃあ、他のみんなはご苦労様でした。何時もの場所に御馳走を用意してあるから、先に食べてて良いわよ」

 

「あっ、ズリィ! ちゃんとアタシたちの分も取っておけよな!」

 

「炎さんじゃないんですから、見境なく食べたりしませんよ」

 

 

 水奈さんのツッコミに、他のみんなも頷いて同意した。何となく同意し難いような気もしたけど、どうやらそれは僕だけだったようだ……

 

「それにしても使い魔か……何だか一人前になった気分だな」

 

「そういうものなの?」

 

 

 既に水、そしてリンとシンの姉弟が使い魔としている僕は、炎さんの気持ちが分からなかったのだ。




このコンビ、結構好きです。

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