昨日の対抗戦は、一試合不戦勝で終わった為にまだ余裕がある。元々それほど激しい魔法を使ってないから大丈夫なんだけど、僕には対抗戦とは別のところでいろいろとあったので、そっちのダメージが残らなかったのが幸いだったな。
「今日も元希君が朝ごはんを作ってくれたのね」
「これくらいしか出来ませんので……」
「ううん、十分だよ。元希君はもう少し自分に自信を持った方が良いわよ」
「そうですね。元希君はもっと自信を持ってバカにしてくる相手を見返すべきですよ」
「僕はクラスのみんなが認めてくれればそれで良いですよ。バカにされるのは慣れてますから」
昔から背が低く、女の子より体重が軽く、見た目も男らしくない僕は、田舎の男の子たちからは女だと言われ、女の子たちからは嫉妬と憎悪の視線を向けられていた。僕は何もしてなかったんだけど、魔法師だって事と先の理由から僕は田舎でういていた。大人の人たちみんな優しかったけど、何故か今思うと距離を置かれていたような感じがするんだよね……
「元希君は田舎で何をしてたの?」
「えっとですね……畑のお手伝いとか、村の掃除、あとはエネルギーが回ってこない事もしばしばだったので、その時は僕が代わりにエネルギー供給をしてたりですかね。……えっと、何で恵理さんと涼子さんは僕に抱きついてるんですか?」
質問に答えると、恵理さんと涼子さんは泣きそうな顔で僕に抱きついて来た。あ、朝から意識が朦朧と……
「元希君、君はずっと此処で生活して良いからね!」
「もう家族になりましょう!」
「うえぇ!? 僕はまだ十五歳ですよ」
「大丈夫よ! 魔法師は国際規約で早婚出来るようになってるから」
そんな規約あったっけ?
「元希君が知らなくても仕方ないわよ。Aランク以上の魔法師じゃなきゃその規約を目にする事が出来ないから」
「そうなんですか?」
「Bランクまでは国際的に活動出来ないからね。Aランクからは魔物討伐も各国で出来るようになりますしね。国際規約は原則Aランク以上の魔法師に向けてのものですから」
「僕はまだBランク扱いなんじゃ……」
確かAランク判定は高校三年生からだったような……
「禁忌魔法を連発する子が、Bランクな訳無いでしょ♪」
「一応Bランクって事になってますが、特例を認められる可能性がありますね」
「……それじゃあ今日の対抗戦はなるべく後衛に回った方が良いんでしょうか?」
「何で? 今日も遠慮なくやっちゃいなさい! 元希君をバカにする子なんて吹っ飛んじゃえば良いのよ! むしろ私が吹っ飛ばす!!」
「姉さん! 吹っ飛ばすのではなく、跡形も無く消し去れば良いんですよ」
「恵理さん! 涼子さんも!! 僕は平気ですし、そんな事しちゃ駄目ですよ!」
「「元希君……」」
「グエェ……」
左右からもの凄い勢いで抱きつかれた僕は、早々に意識を失うのだった……まだ朝なんだけどな……
対抗戦でも、一応HRはある。だから僕は何とか復活して教室に向かった。途中でC,D,Eクラスの人が、僕に今までとは違う視線を向けていた。あれは畏怖の視線だよね……いくら架空世界とはいえやり過ぎちゃったんだろうか……
「おっはよ! 元希、相変わらず辛気臭い雰囲気だね」
「ほ、炎さん……」
「おはようございます、元希様」
「水奈さんも……」
教室に着く前に、クラスメイトと会うのは初めてかもしれないな……でもよかった。二人は変わらず僕と付き合ってくれるようだ。
「元希さん、何か心配事があるの?」
「ずっと沈んだ雰囲気だもんね。ボクでよければ聞くよ?」
「うん、ありがとう……もう大丈夫だよ」
美土さんも御影さんも昨日と同じように接してくれたので、僕はそれだけで満足出来た。だって元々友達と呼べる相手なんて居なかったし、恐れられても仕方ない事をやって見せちゃったんだから……
「おはよう、元希君」
「岩清水さん、おはようございます」
「秋穂で良いわよ。私も元希君って呼んでるし」
「秋穂さん……」
やっぱり異性を名前で呼ぶのは緊張するな……それに秋穂さんはクラス違うし……
「ん~やっぱり可愛いわね~。炎たちが仲良くする気持ちが分かるわね~」
「容姿だけじゃないよ。元希は魔法も凄いんだから!」
「知ってるわよ。昨日E組が棄権したのって、元希君が強すぎるからでしょ? 四人って可能性もあったけど、さっきから元希君に向いてる視線を見れば分かるわよ」
「今日は秋穂さんたちとも戦いますからね。そこで元希様の凄さを体験出来ると思いますわよ」
「元希さんは可愛くて強い凄い子だものね~」
「美土さん!? おっぱいが当たってますよ……」
「ボクも」
「うえぇ!?」
美土さんに張り合うように、御影さんも僕に抱きついてくる……男の子たちが羨ましそうな視線と憎しみの視線の二つが僕に突き刺さる……見てないで助けてくれないかなぁ……
「ほらほら、元希君が困ってるわよ」
「あらあら~」
「ゴメン、元希君」
「うん、だいじょう……ッ!?」
二人が離れてくれたと思ったら、いきなり秋穂さんにキスされた……高校生になってから、数日で三人の女性とキスしちゃったな……
「何してるのよ秋穂!」
「ズルイですわ!」
「なら炎も水奈もすれば良いじゃないの。美土も御影も」
「うえぇ!?」
キスされた事で混乱してる僕に、追い討ちを掛けるように秋穂さんが提案した。その後張り合うように四人にもキスされたのだけど、途中で意識を手放した僕には、誰がどの順番でキスしたのかは分からないのだけどね……
次回こそ再び対抗戦です。