一度気になってしまうと、どうしてもその事で頭がいっぱいになってしまう。僕は自分の出自を調べられないかどうか手を尽くしたけど、僕の力では不可能だった。だからではないが、こういった情報収集に長けているリーナ先生を頼ったのだ。
「……それで、元希ちゃんは真実を知ってどうしたいの?」
「どうしたいって、とりあえずは気になったので調べたんです。ですが、僕の力では不可能でした。知りたい、という衝動は抑えられませんし、真実がどうであれ僕は受け止める覚悟は決めています」
「そう……でも、日本での事だから私でも無理かもしれないからね」
「分かってます。過度な期待はしないようにしておきますね」
このセリフは、リーナさんに負担をかけないように言ったもので、リーナさんの実力を侮っているわけではない。その事はリーナさんも理解しているようで、ワシャワシャと僕の髪を乱暴に撫でてきた。
「なかなか生意気な事言うじゃない、元希ちゃんのクセに」
「僕だって一応は気にしてるんですよ。周りを頼り過ぎなのではないかと」
「むしろもっと頼るべきだと私は思うけどね。それじゃあ、とりあえず一週間調べてみる。それで何も分からなかったら諦めてね」
「はい、よろしくお願いします」
リーナさんに頭を下げ、僕は踵を返し自分のテントへと向かう。僕が望まれて生まれてきたのか、それとも単なる実験の産物なのかは分からない。でも、僕はここにいるみんなと一緒に楽しく生活してきた。それだけは間違いない事実だと思っている。
「随分と難しい顔をしてますね。何かあったんですか?」
「あっ、バエルさん……ちょっと気になる事がありまして、リーナさんに調べてもらうようお願いしてきたんです」
「元希さんが気になる事……ですか? 人工モンスターの事ですか?」
「いえ、ちょっと個人的な事です」
あんまり言いふらす事でも無いし、事実が分からない以上これしか言いようがない。幸いな事にバエルさんはその事を理解してくれたようで、あまり踏み込んだ質問はしてこなかった。
「そうでした。この子は何処で生活してもらうんですか?」
「この子? あぁ、アメフラシの子供か」
僕の使い魔となったアメフラシの姿を確認して、さて何処で生活してもらおうかと頭を悩ませた。
「すまぬ、主様はおるか?」
「水? 随分と久しぶりだけど、何処にいたの?」
「何処とはご挨拶じゃの。主様の命であの姉弟の代わりに神を務めているのじゃよ」
あっ、そうだった……水にお願いして二つの土地を加護してもらってたんだった……
「それで、何かあったの?」
「なに、主様が新たな使い魔を手に入れたと訊いての。そのアメフラシ、ワシに貸してはくれんかの?」
「貸すのはいいけど……どうするのさ?」
「決まっておろう。雨を降らせてもらうのじゃよ。ワシの力では雨では無く滝になってしまっての。そ奴の力を借りたいのじゃ」
水って細かい加減、苦手だったんだ……
「そう言う事なら仕方ないね。お願い出来るかな?」
アメフラシにそう訊ねると、嬉しそうにすり寄って来た。
「名前を付けてあげたらどうです? 何時までもアメフラシのままじゃ可哀想ですよ」
「名前、ねぇ……アマでどうかな?」
「アマ、ですか? 可愛いとは思いますよ」
気に行ったようで、アマも頬擦りをしてきた。よし、この子の名前はアマに決定だね。
「ふむ……ではアマを借りて行くぞ、我が主様」
「うん、頑張ってね」
水とアマを見送り、僕は再び自分の事で頭を悩ませたのだった。
テキトー過ぎる……