その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

161 / 245
神様がいっぱいだ……


神の心配事

 水とアマを見送った僕は、急に眠気が襲ってきたのでテントに戻り横になる事にした。

 

「疲れちゃいましたか?」

 

「そうみたいです……あの洞穴の探査は結構疲れるものだったようですね……」

 

 

 探査している時はそう感じなかったけど、今更になって疲労が全身に回って来た。

 

「晩御飯の準備が終わったら起こしてあげますから、今はゆっくりと休んでくださいね」

 

「はい……ありがとうございます」

 

 

 果たしてそのセリフはちゃんとバエルさんに届いただろうか。僕の意識はあっという間に落ちて行き――

 

『ちょっと良いか?』

 

 

――目の前にシンの姿を確認した。

 

「どうかしたの?」

 

『いや、さっきのキマイラの言葉がちっと気になってな。俺が知る限りでは人工で魔法師を造るなんて不可能なはずなんだが』

 

『自分が知っている事が全てではありませんよ、愚弟』

 

『姉さま!? ですが、少なくともこの日本では人工魔法師の存在は確認されておりません。そして、海外では数例確認されておりますが、その全てが短命、もしくは大した魔法を使えずに処分されたはずです』

 

「処分って……」

 

 

 つまりは殺されたという事だろう。そう考えると僕は普通に生まれた人間――普通の魔法師って事なんだろうか? 恵理さんや涼子さんのご両親の話でも聞ければ別なんだろうけども、あの二人にそんな内容の会話をふったことは無いな……何となくだけど、巧みにかわされてるようなきがするんだよね……

 

『俺の思い過ごしなら良いんだが、普通の人間は二柱も神をその身に宿したら狂ってしまうはずだからよ。お前が特別である事は確かだ』

 

『当たり前ですよ。元希は私たちが主と定めた人間です。支配した私たちをその身に宿したからと言って、力に溺れる弱者ではありません』

 

『ですが姉さま、いくら主とはいえまだまだ子供。自分の意思とは関係なく力に流される事もあるはずでは? しかしこ奴は全くそのような感じも無く、俺たちの力を上手く使っています。これは何らかの特殊能力があると考えた方が自然だと思います』

 

『だから貴方は愚弟なんですよ。元希は自分の意思で私たちの力を制御し、そしてある程度の自由を認めることで暴走を防いでいるのです。だいたい本当に支配された場合、この様に主を精神世界に呼びつけるなんて不可能なんですから』

 

 

 そうなんだ……でも、僕は二人を縛り付ける事も、自由を認めるような事も考えた事無いんだけどな……消耗しきった二人を、日本政府の討伐隊から守る為に僕の身体を貸したのだ。それ以上でも以下でも無い気がするんだけどね……

 

『とにかく、調べるなら徹底的に調べた方が良いぞ。お前がどんな存在であろうと、周りの人間が離れて行くような事は無いだろうからな』

 

『愚弟と違い、元希は実力で女性を繋ぎとめていますからね』

 

「僕はそんな事考えてないけどね」

 

『この姿勢が愚弟との大きな違いでしょうね。力なくして女を繋ぎとめる事が出来ない愚弟とのね』

 

 

 リンの言葉に、シンが居心地が悪そうに身じろぎをした。

 

『その事はともかく、お前が何者であろうとあいつらはお前の味方でいてくれるだろう』

 

『その事は私も賛同しますね。元希の味方である限り、私たちの敵になる事も無いでしょうしね』

 

「とりあえず、僕は今まで通りに過ごすつもりだから。リーナさんの調査結果が来るまで、何も出来ないってのが真実だけどね」

 

 

 動きたくても動けない、そんな状況なのだから、今まで通りの生活を送るのが正解だろう。僕は二柱の神にお礼を言い現実世界へ復帰しようとして――

 

「元希さん、そろそろ起きてください」

 

 

――バエルさんの声で目を覚ましたのだった。




そういえば、この作品を初めて丁度一年経ったな……早いのか遅いのか……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。