バエルさんに起こしてもらった僕は、バエルさんと一緒に食堂へ向かう。今日はキマイラが炎さんの使い魔になった歓迎会らしいけど、どうせならアマもいてもらった方が良かったかもしれない。まぁ、お仕事だから仕方ないとは思うけどね。
「おっさん、お酒呑むか?」
「それには及ばんよ。ワシは逃亡中に普通の水を酒に変化させる魔法を会得してるからの」
「なんだよそれ。便利な魔法だな! っと、漸く起きたのか元希。遅かったな」
「ちょっとリンとシンと話してて……てか、楽しそうだね、炎さんもキマイラも」
キマイラはお酒を呑んでるからまだ分からなくは無いけど、炎さんのテンションはどうして高いんだろう……もしかして炎さんもお酒呑んでるのかな?
「炎さんが楽しそうなのは何時もの事ですわ、元希様」
「そうそう。炎さんは昔から何事も楽しむ性格ですし」
「元希君が懸念している様な事は無いから安心して」
「そうなんだ……」
まぁ炎さんの性格からすれば、アルコールの力なんて借りなくても楽しめるんだろうけども、あれだけの道を往復して、山頂では緊張しっぱなしだったのに疲れないのかな?
「元希君より炎の方が体力あるからね。はい、お水」
「あ、ありがとう、秋穂さん」
「疲れて寝てたんじゃないんだね。何を聞いてたの?」
「ちょっと気になる事をね……それよりも、恵理さんたちを待たなくて良かったの?」
「理事長先生と早蕨先生は、元希さんの寝顔を見てから出かけられました」
「そうなんだ……ん? 何で僕の寝顔を見てから?」
僕と別れてからさほど時間も経ってなかっただろうし、わざわざこっちに戻って来なくても式紙で出かける事を伝えるのは可能だっただろうに……
「何でも元希さんに関連する事を調べに行くとかで……リーナ先生もご一緒とか聞きましたよ」
「そうなんだ」
今度は引っかかりを覚えるような事は無かった。僕がリーナさんにお願いした事だし、その調査に恵理さんと涼子さんが同行してもなんら不思議ではない。むしろ自然だと思うくらいだ。
「元希、アメフラシは何処に行ったんだ?」
「えっ、あぁ……アマなら水に連れられて近くの村に。雨を降らして欲しいからって」
「水神じゃなかったか? 雨くらい降らせるだろ?」
「水がやると加減が難しいんだって。難しいというか面倒だって言ってたけどね」
「まぁあ奴の本来の能力じゃからの、雨を降らすのは。一緒に呑めないのは残念じゃが、早速役に立っておるのなら」
「アメフラシって酒呑めるのか?」
「問題無い。モンスターに人間の法律は当てはまらないからの」
それは呑めているのだろうか……まぁ楽しそうだし水を差すような事は言わないでおこう。
「ところで元希、理事長たちは何を調べに行ったんだ? 元希に関する事としか言わなかったから気になるんだが」
「僕も不確かな事だし、分かったらちゃんと教えるよ」
もし僕がちゃんと生まれてきた人間なら、余計な心配を掛けるだけだし、そうじゃ無くても、不確定な事を言いふらすのは良くないしね。
「元希本人の事なのに、不確かって……さっきおっさんが言ってた事か?」
「多分そうだと思うよ。でも炎さん、くれぐれも他の人には言わないでね」
「てか、さっきおっさんが酔った勢いで言ってたけどな」
「ん? 言っては拙かったのか?」
「……ううん、別にいいよ」
てっきりさっき呑み始めたのだとばかり思ってたけど、このキマイラはさっきから魔法を使ってお酒を呑んでいたのか……口止めするのが遅かったな……
あっさり暴露するキマイラ……始末されても文句は言えないだろうな。