歓迎会は盛り上がっているようだったけど、僕はイマイチ気分がすぐれなかったのでテントに戻って横になっていた。いきなりあんなことを言われれば気分も悪くなるとは思ったし、皆も仕方ないって雰囲気で見送ってくれたんだよね……
「普通の人間じゃないかもしれないなんて……今までの十五年は何だったんだろう……」
僕は間違いなく人間として生きてきた。魔法師か否かの違いはあったけども、普通に学校に通って普通に生活してきたのだ。その時間は間違いなく人間として過ごしてきたものなのに、もしかしたら望まれて生まれてきたのではないのかもしれないのだ……
「良く考えれば、お父さんの事なんて気にもならなかったし、いない事が当然のように思ってたな……何でだろう?」
物心ついた時からお母さんと二人暮らしだったし、お祖父ちゃんお祖母ちゃんに会った事も無いな、そう考えると……田舎暮らしなんだからそれくらいあってもよさそうなんだけども……
「あれ? そうなると何でお母さんはあんな田舎で暮らしてたんだろう……実家、ってわけでもなさそうだし……」
今更ながら色々な事が気になってくる。間違いなく言える事は、お母さんは魔法師じゃ無かったという事くらいだ。勝手にお父さんが魔法師だったんだろうなと思ってたし、全属性魔法師が珍しいものだって事も霊峰学園に来るまで知らなかった。多分意図的に教えてもらえなかったんだろうな……父親について疑問を持たれないように……
「元希さん、起きてますか?」
「バエルさん? ええ、起きてますよ」
考え事をしていたら、テントの外からバエルさんに声を掛けられた。ここは僕が生活してるテントであると同時にバエルさんが生活してるテントでもあるのだから、遠慮とか必要ないんだけどな……
「元希さん、あの事ですが……あまり気にし過ぎない方が良いと思いますよ」
「あの事って、僕が人工魔法師かもしれないって事ですか?」
「……ええ、違うかもしれないんですから、あまり気にし過ぎるのは精神衛生上良くないと思います」
確かにバエルさんの言う通りなのかもしれないし、普段の僕ならそう考えただろう。だけど今の僕の精神は普通じゃ無かった。
「バエルさんに何が分かるって言うんですか? 僕みたいに望まれて生まれてきたんじゃないかもしれない僕の気持ちが、貴女に分かるんですか?」
完全に八つ当たりだ。バエルさんは僕の事を心配してくれているのに、僕はその優しさが嫌だったんだ。みじめに想われているように錯覚してしまっているのだ。
「元希さんの気持ちは分かりませんけど、私も孤児でしたので……死んだと聞かされた両親がもしかした生きているのかも、とかは考えたりしました。私がいらなくなったので施設の前に捨てて、二人だけで生活してるのかも、とかね」
「あっ……ゴメンなさい。嫌な事を思い出させちゃいましたね」
「良いんですよ。ですから元希さんが不安になる気持ちは分かります。そういう時は誰かに甘えるのも良いと思いますよ。自分を大切に思ってくれる人がいるって分かると安心出来ますので」
その言葉に、僕は堪えていたものがあふれ出てしまった。僕は不安に押しつぶされそうだったんだ、とその時に初めて自覚した。
「泣いて良いんですよ、元希さん。誰だって怖いですよ、本当の事を知るのは。でも、周りの人の優しさまで否定しちゃダメです。皆元希さんの事を心配してるんですから」
僕はバエルさんに抱きつき、泣きじゃくってそのまま寝てしまった。起きたらちゃんとバエルさんに謝ってお礼を言おうと、夢の中で決意したのだった。
おっかしいな……ヒロインとして出したはずなのに、何故かお母さんやお姉さんみたいな感じになってる……