一気に実習相手を薙ぎ払った僕は、小さくため息を吐いた。本当なら僕も自分の出自を調べに行きたいのだが、周りに余計な心配をかけたくないという気持ちで板挟みになっているのだ。
「さっすが元希だな! あっという間に敵が吹き飛んだぜ!」
「今のはお主のみの力か? それとも、神の力を借りての威力か?」
「普通に僕だけの力だけど……何か問題でもあった?」
一応周りに被害が及ばないように抑えたつもりだし、事実僕も炎さんもキマイラも煤一つ付いていない。
「普通の魔法師には、あれだけの威力を制御する術は無いと思うんじゃが……ましてや高校生のお主がコントロール出来る規模の魔法じゃ無いじゃろうし……」
「元希は普通と違うんだから仕方ないだろ。でもさ、あんな規格外の魔法、ぶっ放してみたいよなー」
「炎はどうも女っぽくないのう……」
「別にいいだろ。大魔法はロマンだと思うぜ?」
「確かに。あれだけの威力の魔法をぶっ放すのは爽快じゃろうな」
二人の会話を他所に、僕は悩んでいた。今まで普通に使ってた魔法だったけども、ここにも普通とのズレを感じてしまったのだ……
魔法師は魔法の使えない人から見れば異常であるとされるが、今の生活には欠かせない存在でもある。その中でも僕はズレているのだと思い知らされて……今まで普通だと思っていた事全てが異常に思えてしまうのだ。
「あまり気にするでないぞ。お主はお主なのじゃから」
「おっさんが余計な事を言ったからだろ?」
「じゃから謝ったんじゃろうが。炎もデリカシーに欠けておるじゃろうが」
「デリカシー? そんなの気にしてないぞ」
「とりあえず、皆と合流しようよ。現実世界に戻る為に、一ヶ所に集まらないとダメだし」
僕はとりあえず明るく振る舞うことにした。前に健吾君と話した時に自分で言ったじゃないか。他と違うとかそんな理由で避けたりする必要は無いって。
恵理さんたちが調査に出て数日、僕たちはひたすら実戦訓練を続けていた。時には僕に一切魔法を使わせずに戦ってみたりと、水奈さんたちも僕の力に追いつこうと努力しているみたいだった。
「元希様が異常なのではなく、私たちが弱いだけかもしれませんわ」
「元希さんの力は確かにずば抜けていますけど、追いつけないと決めつける必要は無いですね」
「頑張れば、もっと元希君の力になれる」
「……皆」
「だから言ったじゃろ? あまり気にするなと」
「おっさんが気にさせたんだろうが」
皆が僕を気遣ってくれている、これは凄くうれしい事だ。クラスメイト以外でも、秋穂さんやバエルさんも僕が普通である事を証明する為に努力を重ねているらしいと聞いた。
「普通と違うとか、そんな事だけで今まで築いてきた関係が崩れる事はそう多くない。そして、お主は周りから思われておるからの、心配するだけ無駄じゃよ」
「おっさんだけじゃなくって、元希には水やリンだっているだろ? 元希は元希、アタシたちの共通の弟みたいな存在だ」
「弟って、僕と炎さんたちは同い年じゃないか」
確かに僕は見た目が幼いけど、同い年の女の子に弟扱いされるほどじゃないと思うんだけどな……
「ん? 秋穂やバエルだって、元希の事弟だって思ってるんじゃないのか? まぁ、水奈とかは、別の感情が強いけどな」
「炎だってその感情はあるじゃろうが」
「う、五月蠅いな! 別にいいだろ!」
炎さんが照れてる? 何だか珍しい物を見た気がする……でも、確かに弟だって思われてる節はあるなとは思ってるんだよね……でも、僕は一応同い年なんだと思って欲しい。
炎は間違いなく弟だと思ってそう……