恵理さんと涼子さんとリーナさんから連絡があり、あと一週間もすれば帰ってくるとの事だった。何か分かったのかと聞いても、それは帰って来てから教えるとしか言ってくれなかったので、僕はずっと気になっていた。
「元希さん、何をそわそわしてるんですか?」
「恵理さんと涼子さん、リーナの調べ物が一段落して、漸く帰ってくるんですよ。まぁ、まだ一週間くらいは掛かるみたいですけどね」
「……その三人が帰ってくるのが嬉しいんですか?」
「えっ? まぁ嬉しいと言えば嬉しいですし、知りたい事が知れるって言うのも待ち遠しい理由ですけどね」
何か勘違いしてるようなので、僕はバエルさんにそわそわしてた理由を告げた。僕が普通に生まれてきた魔法師じゃないかもしれない、ということはキマイラがお酒の勢いで教えちゃったから、バエルさんも納得してくれたようだった。
「なるほど……良かった」
「良かった?」
「い、いえ! 何でも無いですよ! ……ところで、最近水さんが帰って来ませんね」
「そう言えば……忙しいのかな?」
アメフラシのアマを連れていって以来、水はこっちに顔を見せていない。使いを出せば現状を知ることは簡単だし、会おうと思えばいつでも会いに行けるから、足が遠のくのだろうな……
「ちょっと様子を見てこようかな……」
「私も行きましょうか?」
「バエルさんも? ……じゃあ、一緒に行きましょうか」
この間健吾君に相談してから、ますます僕はバエルさんと一緒にいるとドキドキしている。向こうは僕の事、せいぜい弟くらいにしか想ってくれてないんだろうなと思うと、ちょっと悲しいけどね……
水が代理で治めている土地に足を運び、遠くから水とアマの様子を窺い見る。別に直接顔を見ても良かったんだけど、僕の中でリンとシンが探るように見てから会った方が良いと言ってきたからだ。
「普通に水田とかは安定してるっぽいね」
「適度に雨が降っているのか、地面も乾いてませんしね」
「土壌も安定してるし、リンとシンが焦って復帰しなくても当分は大丈夫そうだね」
その分、水が苦労してるんだろうけども、忘れられた土地で一人ポツンと生活してるより、神様として祭られて忙しい方が水も幸せだろうしね。
「ちょっと顔を見に行こう。もう大丈夫だって確認も取れたし」
「そうですね」
無意識なのか、バエルさんは僕の手を取って歩きはじめる。男として意識されて無いから、こんなにあっさりと手を握ってくれるのかな……
「おお、主様じゃないか! どうかしたのか?」
「ちょっと様子を見にね。アマも元気そうだね。キマイラが会いたがってたよ」
足下にすり寄って来たアマの頭を撫で、僕はキマイラの事を伝えた。するとちょっと寂しそうに俯いてしまった。多分アマもキマイラに会いたいんだろうな……
「一日なら会いに行っても構わないぞ。今は安定してるから、一日二日お前が不在でもなんとかなる」
水の言葉に反応して、アマがピョンピョン跳ねる。余程キマイラに会えるのが嬉しいんだろうな。
「そう言うわけで主様、そやつを連れて帰ってくれんか? また数日後に連れてきてくれればよいから」
「分かった。それと、これ差し入れ」
僕は水が好きな天然水の入ったペットボトルを差しだす。すると、今度は水がピョンピョン跳ねまわった。
「さすがは主様じゃの。これでまた暫くは頑張れそうじゃ。……ところで、何時まで代理を務めていれば良いんじゃ?」
「……もうちょっとかな。完全に回復してないっぽいし」
「そうか。まぁ、中途半端に回復して出て来られても困るからな」
水にそう告げて、僕はアマを連れて拠点に帰る事にした。それにしても、水も頑張ってるんだな……僕も頑張ろう、色々と。
アマは喋らないから楽ですけどね……