アマを連れて帰って来た僕たちを見つけたのか、キマイラが凄い勢いで近づいてきた。それと同時に、アマも嬉しそうにピョンピョン跳ねて、キマイラの方へ向かって行った。
「随分仲良しなんですね」
「そうみたいだね」
二匹が嬉しそうにじゃれているのを、僕とバエルさんは少し離れた場所で眺めていた。
「おーい、おっさん? 何を急に駆け出して……あぁ、友達が帰って来たのか」
「炎さん、その顔どうしたの?」
「お? あぁ、ちょっと魔法開発をしてたら失敗してよ。小規模な爆発を起こしちゃったんだよ。それで煤塗れになってるだけだ」
「……お風呂で流してきた方が良いよ」
「そうですよ。長い時間煤塗れですと、落ちない可能性も出てきてしまいますし」
僕とバエルさんが心配そうに言うと、炎さんはあっけらかんと笑いながら僕たちの心配を不要だと言ってきた。
「大丈夫だって。水奈に出してもらった水で身体を洗えば、きれいさっぱり汚れは落ちるから」
「水奈さんに、ですか?」
「水奈さんの家は元々水神に仕えていたから、その家の人が出す水は神気を帯びていると言われてるんですよね。そしてその水は、対象の汚れを綺麗に洗い流すとか」
物理的汚れでは無いんだろうけども、そっちでも効果を発揮するんだろうな。
「ウチの炎は浄化の炎、美土の家の風は祝福の風、御影の家の光は導きの光、なんて言われてるけど、正直分からないけどな」
「とにかく、女の子がそんな汚れた格好でうろつくのは良くないと思うよ」
「そうですね。炎さんはもう少し身だしなみに気を使った方が良いと思います」
「そうか? じゃあ風呂にするか。もちろん、元希やバエルも一緒だからな」
小柄な身体に似合わず、炎さんはかなり力強い。僕とバエルさんの腕を掴んでずんずんと進んでいく。
「ちょっと! 僕は一緒に入らないよ!」
「ここではお風呂は全員一緒、一緒に入れない時でもなるべく全員で集まるってのが決まりだろ? だから元希も一緒に入るんだよ。お前も結構汚れてるしな」
「え?」
僕は自分の足下を見て、汚れている事に漸く気がついた。さっき隠れて様子を窺ってた時に汚れたのだろう。
「アタシが綺麗に洗ってやるから、覚悟しな」
「自分で洗えるよぅ……」
僕と炎さんのやり取りを、バエルさんは楽しそうに眺めている。全員同い年なんだけど、バエルさんだけ年上の感じがするのは何でだろう……
「漸く来ましたわね。遅いですわよ、炎……さん?」
「あら、元希さんたちもご一緒なんですね」
「炎、ナイス」
「でも、炎ばっかり元希君と手を繋ぐのは不公平だと思うけどね」
既に僕たち以外の全員が集まっていた。もちろんお風呂場なので全員裸だ……前も隠していない。
「ちょ、ちょっと! 前から言ってるけど、少しは隠してよぅ」
「元希様に見られるのでしたら、私は構いませんわ」
「わたしも。元希君のも見てるしね」
「見た目に似合わず立派」
「これがギャップという事なのかな?」
じろじろと見られ、僕は恥ずかしくなってきて逃げ出そうとしたが、炎さんががっちりと僕の腕を掴んで離さない。
「ほら、洗うから大人しくしろ」
「炎さんもせめて隠す努力はしてよ!」
「? 別に見られても恥ずかしくないだろ。今更だし」
「そう言う事じゃないの! 僕は何時まで経っても恥ずかしいんだよ!」
僕の叫び声が反響したが、誰の心にも響かなかったようだった……ここに恵理さんや涼子さん、リーナさんが加わっても一緒の結果なんだろうな……
元希君が恥じらい女子が歓喜する……絶対逆だと思う……