その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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使い方正しいのかな……


老婆心

 色々あったお風呂から漸く出てきた僕は、ぐったりした気分でテントの中で倒れ込む。これから夕飯の用意が始まるのだが、僕は今日当番では無いので完成まで休んでいようと思っていたのだ。

 

「ちょっと良いか、元希よ」

 

「キマイラ? 何かあったの?」

 

 

 基本的に炎さんと一緒に行動しているキマイラが、何故か別行動をして僕のテントを訪ねてきた。彼の背中にはアマが乗っている。

 

「随分と仲が良いんだね」

 

「こ奴の両親とは古馴染じゃったからの。ワシにとってこ奴は子供みたいなもんじゃ」

 

「そうなんだ。それで、用事はなに?」

 

「いやな、暇じゃったからお主が三柱の神を従えたいきさつを聞きたくての」

 

 

 別に従えてるわけじゃないんだけどな……水はともかく、他の二人は僕の中で力を回復させてるだけだし……

 

「あの水神、人に従うようなタイプではないじゃろうに」

 

「水? 水は日本支部の人たちが討伐に失敗して逃げ出した先が、霊峰学園だっただけだよ。偶々僕が傷を治療したら、なつかれちゃって」

 

「神の傷を治したのか? 随分と高い治癒スキルじゃの」

 

「そうなの? リンはこの側の雑木林で倒れてるのを助けただけだよ。外来種を処理するのに力を使い過ぎて、元の姿でいられなくなっちゃったらしいんだ。それで記憶も失ってたから、僕と一緒に行動してただけで、従えてるわけじゃないよ」

 

「じゃが、お主の中で生活しておるのじゃろ? 普通神が人間に宿るなどあり得んぞ。それこそ、主従関係でもない限り」

 

 

 そうなんだ。神との契約には色々と面倒が付きまとうって、なんかの本で読んだ事があるし、実際に契約したら人間が従で神が主のはずだ。だけど僕はリンに命令されないし、僕もリンに命令はしない。これは正式な主従契約じゃないからだろうか?

 

「もう一柱の神はどうなんじゃ?」

 

「シン? 彼はリンの弟で、リンの事を心配して現れただけだよ。色々あって力を使いはたしてリンと一緒に僕の中にいるけど」

 

「二柱も人の身に宿せば、必ずと言って良い確率で魔力が暴走するはずじゃが、お主にはそれが無い。どれほどの制御力なんじゃ……」

 

「本当の契約じゃないからだと思うよ。契約してたら、多分きっと僕の魔力は暴走してると思うし」

 

「あれほどの魔力……暴走させたら街一つどころか国一つ消し去ってしまうほどじゃからな。万が一正式な契約を交わす場合でも、慎重に事を運ぶんじゃぞ。ワシも折角永らえた命を失いたくは無いからの」

 

「……僕だってまだ死にたくないよ」

 

 

 国一つ消え去るかもしれない魔力じゃ、暴走させた僕だってただじゃすまないだろうし……てか、そんなに強大な魔力を有してるつもりは無いんだけど。

 

「こ奴もお主を気に行っておるようじゃし、くれぐれも魔力の制御には細心の注意を払ってくれ」

 

「分かってるし、それ程強力な魔法を放つ機会なんてそうそうないだろうしね」

 

 

 それに、そろそろ恵理さんや涼子さんが帰ってくるから、あの二人がいてくれれば僕がそんなに強力な魔法を放つ必要も無くなるだろう。僕はキマイラの心配を大袈裟だと思っているし、キマイラの方も一応って感じだった。

 

「それじゃあ、ワシはこ奴と散歩にでも出掛けてくるかの」

 

「そろそろ夕ご飯だから、あんまり遠くにはいかないでよ」

 

「分かっておるわい」

 

 

 そう言い残してキマイラとアマは散歩に出かけた。てか、アマは喋って無いけどね……




何事も気にし過ぎは良くないですからね……

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