その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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相変わらずの元希君無双……


対抗戦二日目 VSB組

 次に僕が意識を取り戻したのは、体育館に移動した後だった。誰かに運ばれたんだろうけども、僕のクラスメイトは皆女の子だしな……誰に運ばれたのであっても情けないよ……

 

「おっ、気がついた?」

 

「もうすぐB組との対抗戦が始まります。元希様も準備してください」

 

「うえぇ!? 気がついてすぐに対抗戦なの!?」

 

「元希さんなら大丈夫ですわよ。わたしが保障しますわ」

 

「ボクたちもちゃんと戦うから」

 

 

 そういわれれば、昨日の対抗戦って僕以外まともに魔法攻撃してない……よね? 美土さんと御影さんは魔法を使ってたけど、あれはトラップだったし……

 

「A組相手まで楽が出来ると思ってたんだけどなー」

 

「炎さん、相手を見くびるのは悪い癖ですわよ」

 

「分かってるって。でも水奈のようにずっと緊張感を持ってるのも如何かと思うけどね」

 

 

 架空世界で開始の合図を待っている間、皆は程度の差はあれ緊張してる感じだった。でも僕はもう慣れちゃったのか自然体で居る事が出来る……緊張する間も無く架空世界に来てたからだろうか?

 

「……始まってる」

 

「「「「えっ?」」」」

 

「急いで! B組の人たちは既に僕たちを包囲してるよ!」

 

 

 恵理さんの仕業なのかな? 僕たちには開始の合図を聞こえないようにしたんだろうな。でも何で……

 

「岩よ、壁となり我らを守れ『ロックウォール』」

 

 

 とりあえず横からの攻撃はこれで防げるかな……後は上からの攻撃に備えないと……

 

「上等! 元希、アタシたちは左側の敵を蹴散らす」

 

「ここまで私たちに近付くなんて……愚かですわね」

 

「それじゃあわたしと御影さんは右側ですかね」

 

「もう捕らえてる」

 

 

 御影さんが得意としてる魔法の一つ、『影縫い』。相手の動きを封じてその隙に攻撃をする魔法で、この魔法自体に攻撃力は無い。

 

「じゃあ元希は正面と背後を任せるからね」

 

「くれぐれも手加減などしませんように」

 

「わたしたちを怒らせたら如何なるか教えてあげませんとね」

 

「ボクはフォローしかしないけどね」

 

 

 ……四人って怒るとこんなに怖かったんだ、しっかり覚えておこう。

 

「炎よ、礫となりて敵を焼き尽くせ『ファイアーボール』」

 

「水よ、その形を変え敵を貫け『ウォーターランス』」

 

 

 炎さんと水奈さんがB組の人たちに攻撃魔法を喰らわせる。防御魔法を張ってるみたいだけど、それじゃあ防げないよ。

 

「風よ、吹き荒れ敵を切り刻め『ウインドカッター』」

 

「美土が中級魔法を使うなんて、手加減しないんじゃなかったの?」

 

「この程度の敵に力を見せると思ってたのですか?」

 

 

 美土さんって怒ると性格変わるんだ……笑ってるのに怒ってるように見えるよ……

 

「さて、僕もやらないと怒られちゃうからね」

 

 

 僕の担当は正面と背後、せっかく囲んでるのに魔法攻撃をして来ないのを見ると、恵理さんが言ってたように実戦は体験した事無いんだなと思える。

 

「光よ、その姿を雷に変え敵を焼き尽くせ『ライトニングボルト』」

 

 

 上級魔法『ライトニングボルト』で前後に雷を落す。これで動け無い程度にダメージを負ってくれれば……

 

『は~い! 勝者S組~』

 

「あれ?」

 

 

 これからだと思ってたら気の抜ける恵理さんのアナウンスが流れてきた。つまり敵将が戦闘不能になったのかな?

 

『いや~、不意打ちに如何対応するのか興味があったのに、まさか攻撃される前に全滅させるとはね~』

 

『姉さん、次は悪ふざけしないでくださいよ』

 

『涼子ちゃんだって興味があったんでしょ?』

 

 

 モニターで見てた二人は、程度の差はあれ僕たちの対応に興味を持っていたようだった。恵理さんだけかと思ってたのに涼子さんまでとは……

 現実世界に戻ってきた僕たちを出迎えたのは、恵理さんと涼子さんだけではなかった。

 

「凄かったわね。私が負けた理由が分かったわよ」

 

「秋穂さん……見てたんですね」

 

「ええ。だって次がA組対B組ですからね。相手が居なかったので視察をしてたのよ」

 

「そっか……今日は同時に試合出来ないんだ」

 

 

 昨日は相手が三クラスあったから同時に開始出来たけども、今日はそれぞれ二クラスしか相手が居ないんだった。

 

「それにしても元希君、当たり前のように上級魔法を使うなんてね」

 

「それより僕は、美土さんを怒らせちゃいけないって思ったよ……」

 

「まぁ美土は怒るとタイプが変わるからね」

 

 

 今は落ち着いてるけども、また何時怒るか分からないからな……ちょっと距離を取っているんだよね。

 

「う~ん、可愛いだけじゃないってのもポイント高いわよね~」

 

「うわぁ!? すりすりしないでくださいよ~」

 

 

 いきなり秋穂さんに抱き上げられすりすりされる。てか何で皆僕より背が高いんだよぅ……

 

「あー! 秋穂、抜け駆けは駄目だぞ!」

 

「そうですわ! そもそも秋穂さんはそろそろ試合なのでは?」

 

「元希さんにすりすりするのはわたしの役目なんですよ!」

 

「違うけど美土の言う通り」

 

 

 いや御影さん、どっちなの?

 

「はいはい、それくらいでね。元希君も困ってるから」

 

「恵理さん……イタズラはもうしないでくださいね? ビックリしましたよ」

 

「ゴメンゴメン。でも普通にやっても元希君たちが勝つって分かってたし、今回は急に敵に囲まれた場面を如何切り抜けるかが見たかったのよ」

 

「……つまりB組の人たちは当て馬?」

 

「ぶっちゃけるとそうね。せっかく囲んだのに攻撃出来ずに終わるなんて……今年は上位六人以外は鍛えなきゃ駄目ね」

 

「毎年そんなものでしょ、姉さん」

 

「でも、今の二年生は十人くらい使える魔法師が居たわよ?」

 

 

 平均がどれくらいか分からない僕には、それが多いのか少ないのかが分からなかった。

 

「兎に角、このクラス対抗戦は生徒たちの実力を把握するのが目的ですので、今回の件は貴方たちSクラスの実力を測る上でも必要な事だったの。だまし討ちみたいになってごめんなさいね」

 

 

 涼子さんが謝ってくれたので、四人は納得してくれたようだった。でも涼子さん……僕を抱き上げながら謝るのはやめてくれませんかね……なんだか凄く恥ずかしいんですけど……




次回は秋穂が戦います。

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