恵理さんと涼子さんと一緒に拠点に戻ると、キマイラが心配そうに出迎えてくれた。
「戻ったか少年。して、何か分かったのか?」
「まだ全容は分からないけど、僕があの村出身じゃ無かったという事は分かったよ。お母さんも本当のお母さんじゃなかった」
「そうか……じゃが、今まで親子として過ごしてきた時間は否定してはいかんぞ。どんな理由なのかは分からんが、お主を息子として育ててくれた事は確かなのじゃから」
キマイラの言葉に、僕は頷いた。本当のお母さんじゃないとしても、あの人は間違いなく僕のお母さんだった。一緒にお風呂に入ったりご飯を食べたりした記憶もあるし、僕の事を本気で心配してくれたんだ。血のつながりなんて関係なく、あの人は僕のお母さんだって今でも言い切れる。それだけ一緒に過ごしてきた時間は僕の中で大きいのだから。
「それにしても、人工モンスターって賢いのね。岩崎さんにまかせっきりだったから詳しく調べて無かったけど、知能高いのね」
「ワシは単純に年の功じゃよ、お若いの。老骨の経験からの言葉じゃから、そこまで感心する事は無いじゃろ」
「いえ、私たち年若の者には、年長者の言葉は大きな意味を持ちます。ましてや私や姉さん、元希君のように普通の人間からも魔法師からも敬遠される存在にとっては」
「気にし過ぎじゃと思うがの。少年には普通科の生徒に友人がおるようじゃし、必ずしも敬遠されるわけじゃないのじゃろうよ」
一応魔物であるはずのキマイラに人生を語られてる僕ら三人は、事情を知らない人から見ればどんな風に見えるんだろう? そもそも事情を知らない人は、キマイラが喋ってる時点で不気味がるのかな?
「ワシが言いたい事は、全属性魔法師じゃからと言って敬遠される必要はないという事じゃ。お主らも他の魔法師と変わらぬ――もっと言えば普通の人間と変わらない存在なのじゃよ。魔物であるワシが言うんじゃから説得力は無いかもしれんがの」
「そんな事無いわよ。ありがとう、キマイラ」
「私たちは少し気にし過ぎてたのかもしれませんね。しかも無意識に」
「でも、その考えを全ての人に持ってもらわないと、僕たちが気にしなくても状況はあまり変わってくれないんだよね……キマイラのように皆が思ってくれるように、僕たちも頑張りましょう」
「前向きになれたようじゃの。さっきまで暗い顔をしておったからつい語ってしまったのじゃよ。年寄りの戯言でも役に立ったのなら幸いじゃ」
そう言い残してキマイラはアマと一緒に炎さんのところへ行ってしまった。やっぱり人間でも魔物でも、経験を重ねることで言葉に重みが出てくるんだな……
「さて、久しぶりに帰って来た事だし、一緒にお風呂に入ろうか、元希君」
「えぇ!? 何でそんな流れに……」
「共同生活する上で決めた事がありますからね。他の皆さんも呼びましょう」
「涼子さんも、何でノリノリなんですか!?」
何時もなら恵理さんより申し訳なさそうな雰囲気のはずなのに、今日は恵理さん以上にノリノリの涼子さん。もしかして数週間別行動だったからかな? 普段大人しい人ほど、禁断症状が出た時が怖いって何かの本で読んだし……
「さぁ元希君、隅々まで洗ってあげますからね」
「ちょっ、涼子さん!? 脱がすならせめて脱衣所にしてください!」
いくら周りに誰もいないからって、こんなところで脱がされたくない。せめてもの抵抗としてじたばたしたけども、何時の間にかパンツ以外を脱がされていた……お願いだから最後の一枚は踏み止まってくれないかな……
伊達に長生きしていないという事で……