抵抗空しく全てを脱がされた僕は、恵理さんと涼子さんに連れられて女子更衣室に来ていた。先に準備していたのか、炎さんや水奈さんたちもそこにいて、僕は逃げ出したい気持ちでいっぱいになっていた。
「おう元希、遅かったな」
「炎さん、その口調はどうにかなりませんの? 炎さんも一応は令嬢なのですから、言葉遣いは厳しく躾けられたはずですわよね?」
「アタシは別にそんな事気にしなかったからな。それより、水奈こそもう少し気楽に喋れないのか? 堅苦しいぞ」
「まぁまぁ、炎も水奈もその事は置いておきなさいよ。口調なんてすぐに改められないんだからさ」
「秋穂さんの言う通りですね。お二人とも、少しは気に止めておいた方がいいですよ」
喧嘩になりかけたのを、秋穂さんと美土さんが宥めて穏便に治まった。まぁ、確かに口調を改めるのは大変だし、結構な勇気もいるだろうしね……
「それより元希君、何で脱衣所に来る前から裸なの?」
「いくら人がいないからって、さすがに解放過ぎじゃね?」
「僕が好きで脱いだわけじゃないよ! 恵理さんと涼子さんに……」
「さぁ元希君! 隅々まで洗うから覚悟しなさい」
「皆さんも元希君を洗いたいなら急いでくださいね」
急いでって、僕は何人に洗われるんですか……
あの騒動から数日後、いよいよリーナさんが帰ってくる。彼女は僕の出生を辿り、ついでに恵理さんと涼子さんの戸籍も調べると言っていたらしい。前も思ったけど、戸籍なんて簡単に調べられるのだろうか?
「よう元希、なに辛気臭い顔してるんだ?」
「あっ、健吾君……そんな顔してる?」
「ああ、高校生がしちゃいけない顔してるぜ」
どんな顔だろう、それは……まぁ、多分鏡を見れば分かるんだろうけど。
「最近何だか落ち込んでるよな、お前? 悩みがあるなら相談に乗るぜ。まぁ、恋の悩みなら俺には分からないけどな」
「大丈夫、そう言った事じゃないから。そもそも悩んでるわけじゃ無くって試験どうしようって考えてるだけだよ」
「試験? あぁ、魔法科は国から定期的に魔法能力を図る試験を受けるように言われてるんだっけか。でも、元希なら考えるまでもなく受ければ合格だろ? 何を考えるって言うんだよ」
「受けるか受けないかを……この前日本支部の人たちとちょっとあってね……会い難いんだよ」
リンやシンの時もそうだし、水の時も正面からぶつかった。そしてなにも言ってこないけど、キマイラの事も気にしてるんだろうし、今顔を合わせれば最悪魔法戦争に発展するかもしれないのだ。
「大変だな……あっ、そう言えば、この前教頭が話してた『先生』な、あれここら一帯を監視してる代議士らしいってさ。担任にそれとなく聞いたらあっさり教えてくれた」
「代議士? 監視? この辺りは学園の自治のはずだよね?」
「だから、裏でこっそりってヤツだろ。教頭に金でも掴ませて情報を貰ってるとかじゃないの? まぁ、公然の秘密っぽいけどな」
確かに、バレてるのに裏でこっそりは不可能だ。それでも表だって動かないのは、恵理さんや涼子さんと一戦交えたくないからなんだろうな……二人は世界的に有名な全属性魔法師で、今の日本支部なら十分もてば良い方だってリーナさんが言ってたし。
「会い難いなら受けなければ良いんじゃないか? 言われてるだけで義務じゃないんだろ? 一回くらい飛ばしても良いと思うぜ、俺は」
「そっか。ありがとう、健吾君」
「気にするな。友達だろ」
健吾君は、僕が普通に生まれてきたわけじゃないと知っても、友達だと思ってくれるのかな? 健吾君は物事の捉え方が大雑把だけど、ちゃんと僕を見てくれているし、多分大丈夫だよね……リーナさんの結果次第だけど、健吾君には打ち明けた方がよさそうだし……
いい相談相手だなぁ……