恵理さん、涼子さんと一緒に拠点へ戻った僕は、炎さんたちに僕たちの出生について話す事にした。
「つまり、理事長先生や早蕨先生も。元希と一緒で親が誰か分からないってことなんだな?」
「そう言う事になるのかしらね」
「元々親だとは思っていませんでしたので、元希君程ダメージはありませんので、そんな顔をしないでください」
水奈さんとバエルさんの表情が暗かったので、涼子さんが心配しないように告げる。まぁ僕も似たような顔をされたから、涼子さんがそう言うのは何となくわかってたけど、それでもやっぱり気になっちゃうよね……
「全属性魔法師の親だと思われてた人が違うとなると、三人は誰が生んだんだ?」
「元希君の田舎にヒントがあるかもって事で、リーナが調べに行ったわ」
「潜入は私たちには出来ませんし、リーナならある程度忍び込めれば大抵の事は調べ上げてくれますしね」
リーナさんは潜入捜査員では無いはずなんだけどな……なんで潜入が得意なんだろう?
「親がいない、と言う事では私と一緒なのですね」
「アレクサンドロフさんは孤児だったんだっけ? 親が欲しいと思った事は?」
「子供の頃は少しだけ……施設でも私だけ魔法が使えたので、何となく疎外感を感じてましたし」
「ロシアは魔法師多くないですからね……」
「普通くらいですね。でも、大抵は親がいる魔法師ですので、施設育ちの私は物珍しい感じで見られてました」
そう言えばバエルさんをロシアに迎えに行った時、何となく居心地悪そうだなって思ったのはそういう事だったんだ。
「親が分からないってだけで、理事長先生も早蕨先生も、もちろん元希も何一つ変わらないんだろ? なら気にする事無いな」
「誰もが炎さんのように簡単に割り切れるわけではありませんよ。ですが、お三方が私たちと繋がりのある方で、魔法界には必要な存在である事は変わりありませんわね」
「日本支部の方々がどう思おうと、理事長先生と早蕨先生、そして元希さんは私たちの大切な仲間ですからね」
「先生二人にはまだまだ教わらなきゃいけない事があるし、元希君にも指導してもらわないと」
「そうだね。全属性魔法師は名前の通り全ての属性魔法が使えるから、教わるのには最高の人材だもんね」
「これからもよろしくお願いします」
六人が僕たちを受け容れてくれるとは思っていたけど、現実に起きると嬉しいものだった……泣きそうになったけどここは泣く場面じゃない。
「ありがとう、皆」
「この事は他言無用よ。特にキマイラは口が軽いみたいだから、岩崎さんがしっかり口止めしておいてね」
「だとよおっさん。あんまりペラペラしゃべるんじゃないぞ」
「分かっておるわい。喋るなと言われれば喋らんぞ」
「それじゃあ、私たちの事を話し終えましたので、みんな一緒にお風呂に入りましょう」
「えっ……」
折角感動していたところに、涼子さんの宣言を止めてもらいたいものだったけど、既にノリノリの炎さんや恵理さんを止めるのは難しいだろう。ましてや涼子さんが発案者で水奈さんや美土さんも乗り気のところを見ると、既に逃げるのは無理そうだしね……
「せ、せめて脱衣所は別で……」
「元希君、諦めるべき」
「御影さんまで……」
ただ一人、バエルさんだけは同情的な雰囲気だけど、この人数相手に戦って勝てる未来が見えないのか、雰囲気だけで助けてはくれなかった……まぁ、僕も戦って勝てるなんて思えないし、仕方ないかもしれないけどさ……
「さぁ元希君! 今日こそは女の子の服を……」
「それだけは絶対に嫌です!」
恵理さんの悪乗りだけは絶対に拒否しなければ……僕が女の子の服を着ても似合うわけないのに……
やっぱり大変な元希君……