恵理さんと涼子さんが帰って来たお陰で、授業は自習ではなくなり、ちゃんとした訓練も再開した。
「今日こそはあの魔法を完璧に発動させるぜ!」
「炎さん、もう煤塗れになるのは御免ですからね」
「わたしの風でも防ぎきれない程の爆炎は勘弁してほしいですね」
「私は影に隠れたから問題無かったけど」
炎さんが独自開発している魔法は、未だに成功率が五割に満たない。その所為なのか分からないけど、発動させると大抵は大爆発を起こし辺り一面を煤塗れにするのだ。
「理論は間違ってないと思うんだよな……元希、何か分からないか?」
「力を込め過ぎてるんじゃないかな? いきなり高い火力を求めないで、安定して発動出来るようになってから火力を高めるとか」
「それじゃあつまらないだろ? やっぱ大爆発はロマンだって」
「男の子のロマンではありませんか? あまり私には魅力的には思えませんが」
僕もそんなに魅力的には感じないんだけど……まぁ、僕が普通じゃないからかもしれないけど……
「わたしも風の結界の威力を高める訓練をしませんとね。せめて炎の大爆発を受け止められるくらいには向上させます」
「ボクも一人だけじゃ無くって、皆を影の中に逃げられるようにしたい」
「……何故か皆さん前向きに考えてますが、炎さんの暴走を止めようとは思いませんの?」
「はいはい、そろそろ仮想世界に転送するから、お喋りは一旦やめてね」
恵理さんに注意され、炎さんたちは一先ず黙って転送を待った。僕も転送酔いしないように注意しながら、炎さんの魔法を成功させる為の案を考えていた。
『今回は中級モンスター討伐を想定した訓練だから、ある程度リスクを冒して大魔法を使うか、リスクを避けて小魔法で確実に倒すかは任せるわ』
『制限時間は二十分。敵は少なく見積もって百だと思ってください』
涼子さんの補足説明を受け、炎さんががぜんやる気を出している。
「百いるって事は、大魔法で吹き飛ばした方が早いな!」
「未完成の魔法に頼るのはどうかと思いますが……」
「未完成だから練習するんだろ? 水奈だって大回復魔法を練習するチャンスだろ」
「怪我をしないのが一番いいのですが……まぁ、炎さんの性格上突っ込んでいくスタイルなのは仕方ありませんが……」
炎さんと水奈さんが言い合っている間に、僕と御影さんで敵の位置を探る。百以上いるって事は、複数の方向から襲ってくる可能性が高いもんな……
「西から二十、東から三十……」
「北十五、南三十……いや、六十」
「もう百以上ですね」
美土さんの冷静さは、本当に感心するよ……でも、今回は中級モンスターを想定した訓練、冷静さを保っていても適度に緊張感は持って欲しいと思う。
「それじゃあ、アタシは南を担当するぜ! いでよ、おっさん!」
「ちょっと炎さん! ……もう! 私が炎さんを援護しますので、美土さんたちは他の方向をお願いしますわ!」
……返事をする前にいなくなっちゃったし、とりあえず南側は二人に任せるとしよう。
「僕は東を担当するから、美土さんと御影さんは北と西をお願いね」
その二方向ならそれ程多くないし、戦闘が主じゃない御影さんでも倒せるだろうしね。僕は二人がそれぞれの方角に進むのを見てから、東側へ移動した。
大爆発はロマンだ…怪我人が出ない方向なら