六人の戦闘を見ていると、なんだかうずうずしてくるのは何でだろう? さっきまで自分も戦ってたんだから、戦いたい衝動に駆られているわけではないだろうし……
「元希君、どうかしましたか?」
「いえ、ちょっと戦い方がぎこちないかなと思いまして」
特にぎこちないと感じるのは、やはり御影さんだ。元々後方支援か得意な御影さんに、攻撃魔法は似合わない。だからぎこちなく感じるのだろうと、僕は自分の中で結論付けた。
「この時期の普通の一年生なら、中級相手でも苦戦するんだから、彼女たちは十分強いと思うけどね。元希君から見れば、彼女たち六人は特別なのよね」
「そもそも僕、あの六人以外に魔法科に知り合いいませんし……」
普通科に健吾君という友達がいるだけで、他の人は知らないもんな……改めて考えるまでもなく、交友範囲が狭すぎる……
「まぁ、元希君の交友範囲はともかくとして、彼女たちの期待値からすれば、この程度の敵は倒せて当然なんだけどね。魔法に慣れてないってのもあるけど、光坂さんと氷上さんは特に戦い方が危なっかしいわよ」
「風神さんと岩崎さんはとりあえず魔法は使えてますし、石清水さんとアレくサンドロフもぎこちなさは感じますが、討伐には問題ないですし」
「水奈さんも御影さんも、基本的には支援魔法を得意としてますからね。僕たちみたいに個人で討伐に参加させられる事はないでしょうし、多少ぎこちなくても問題は無いと思うんですが」
グループ討伐が基本なので、全員が攻撃魔法を使えなくても何も問題は無い。無いのだが、彼女たちの家が特殊なので、普通の魔法師としての期待以上の成果を求められるのだ。だから今回の新魔法の特訓が行われているのだが……苦手なことは誰にでもあるということだね。
「まぁ、あの六人は基本的に元希君と行動するでしょうし、多少ぎこちなくても元希君がフォローするでしょうしね」
「召喚獣を五体使役し、自分も特攻を仕掛けるんですから、多少のミスくらい簡単にフォロー出来ますよね」
「……なんだか非難されてません?」
何かしたかな? 二人に怒られるようなことはしてないつもりだけど……
「せっかく特別に組んだプログラムを、いとも簡単に終わらせられたら非難くらいしたくなるわよ」
「元希君が強いのは知ってましたが、あそこまで規格外だったとは知りませんでした」
「えっ、だって本気でやらなきゃ終わらないかもしれないって思ったので……それに、偶には召喚してあげないと可哀そうだったので」
リンやシンはともかく、他の三体は戦闘訓練でもあまり出してなかったし……不貞腐れることは無いにしても、偶には外に出たいと思うかもしれないもんね。
「とにかく、明日はあんな速攻で終わらせないでね」
「元希君用に特別プログラムを組むのだって、楽じゃないんですから」
「……ごめんなさい」
なんか僕が悪いわけではないのだろうが、謝らなければいけないような気分になったので、僕は素直に頭を下げた。恵理さんも涼子さんも忙しい中、僕の為に特別プログラムを考えてくれているのだ。もう少し時間をかけてそのプログラムに挑むべきだったかもしれない、と思い始めていた。
「? 明日もあるんですか!?」
別メニューは寂しいから、みんなと一緒が良かったのに……
大人二人の八つ当たりのような気も……