水からの依頼を果たすために、僕たちは水が代理で治めている村の近くに来ていた。
「水さんに挨拶していく?」
「いや、気配で分かってるだろうし、何かあれば報告するから大丈夫」
一応は僕の使い魔って事になってるんだし、最低限のパスは通っている。報告もわざわざ顔を合わせなくても出来るのだ。
「今のところおかしな気配はない」
「荒らされている様子もないですね」
「まぁ、簡単に証拠が出てくるなら、水も僕たちに頼まないで自分で処理したと思うしね」
仮にも水神なのだから、下級や中級くらいなら自分で始末することも可能だろう。それが出来ないと言うことは、上級の気配を隠すことに特化したモンスターが住み着いている可能性があるという事なのだ。
「それにしても、のどかな村ですね」
「このあたりも過疎化に拍車がかかってるらしいからね。でも、霊峰学園で使ってる食料の大半は、このあたりから仕入れているから、卒業生が手伝いに来ることがあるって恵理さんが言ってたけど……」
本当に手伝いに来ているのなら、モンスターの気配などを掴んでいるかもしれない。そこらへんの報告が無いってことは、モンスターがいないのか、それとも手伝いに来ていないのかのどっちかだろう。
「元希君、向こうの山に微弱ながら人じゃない気配がある」
「水とかアマじゃなくって?」
「その二人の気配は村の中心部にあるから、間違いないよ」
御影さんの報告を受けて、僕は自分の影を山の方向に飛ばす。ついでに式神も飛ばして偵察を行う。
「相変わらず元希君の魔法はスムーズで鮮やかね」
「ボクも頑張ってるけど、元希君には適わない」
「今回、私や秋穂さんの仕事って何なのでしょう?」
バエルさんが考え込んじゃってるけど、今はそっちに対応している暇がない。山全体に目を向け、異変が無いかをくまなく探しているのだから。
「……これかな? なんかおかしな気が漂ってる場所が複数あるね」
「式神で詳しく調べられないの?」
「邪気が強すぎて、近づいたら弾けるかも」
それにしても、なんだってあんなに気が乱れてるんだろう……実際に見にいけば分かるのだろうけども、生憎今の僕たちは軽装で、とてもこのまま山に登る事は出来ない。それに、万が一上級モンスターだった場合、恵理さんや涼子さんのバックアップも無しに突っ込みのは危険極まりない。ここは式神を残して対策を練るのが得策だろうな。
「一旦拠点に帰って、恵理さんと涼子さんに報告しなきゃね。まだ数ヶ所だけど、もしかしたら増えていくかもしれない。調査は必要だね」
「じゃあ、全員で戻るのかしら?」
「万が一に備えて、僕はここに残るよ。報告は三人でお願い」
「でも、ボクたちじゃ元希君が感じたことを報告できない」
「……じゃあ、僕が報告に行くから、三人はここに残って。それで、何かあったら村を守るように動いて」
簡単な指揮だけして、僕は恵理さんと涼子さんに報告に向かうために村から拠点まで走る。こんなんだったら、喋れる式神を開発すればよかったな……
元希君、悲劇の中間管理職みたい……