疲れ果てて眠ってしまった僕が、次に目を覚ましたのは誰かの背中におぶさっていた時だった。微妙に揺れる身体を動かそうとしたときに、僕の意識は一気に覚醒した。
「あ、あれ? 運ばれてる?」
「ようやく起きた。元希君、合流先で寝てるんだもん」
僕が起きたことに、最初に気づいたのは隣を歩いていた御影さんだ。つまり、僕は秋穂さんかバエルさんに運ばれているという事か……まぁ、身長差を考えれば、御影さんは僕を背負って歩けないかもしれないもんね。
「元希君、よっぽど疲れてたんだね。あんなところで熟睡するなんて」
「途中で念話を思い出したようですし、少なくとも一往復半は全力疾走したんですから、仕方ないかもしれませんけどね」
秋穂さんとバエルさんに声を掛けられ、僕は誰に背負われているのかが分かった。秋穂さんの声が横から、バエルさんの声が前からしたので、僕はまたバエルさんに背負われているのだ。
「ごめんなさい、もう歩けますから降ろしてください」
「大丈夫ですよ。もう拠点に着きますから」
「本当は私が背負ってたんだけど、疲れちゃったからバエルにチェンジしてもらったんだ」
「ボクも元希君をおんぶしたかったけど、身長差でボクは諦めた」
つまり、拠点から半分の地点で僕を最初に背負ったのは秋穂さんで、どこか途中でバエルさんに交代したという事なのか……てか、女の子に背負われてる僕っていったい……
「元希さんは軽いから、別に気にしなくていいですよ」
「女子として、その体重は羨ましいけど」
「みんなだって重くないと思いますけど」
「じゃあ元希君、私を背負ってみる?」
「……僕は背が低いから、秋穂さんやバエルさんを背負ったら動けませんよ」
体重が軽くても、背が低かったら男として情けないと思う……一向に成長期が来ないのは、僕が造られた存在だからなのだろうか……
「おかえりなさい。さすがに疲れたみたいね」
「途中で寝てたのを拾ってきました」
いや、拾ったって……半分は当たってるけどさ。
「元希君の報告通り、確かに不穏な空気が充満してるわね。一応監視の式は飛ばしておいたし、何か異変があればすぐに分かると思うわ」
「本格的な調査は後日、日を改めることとしました。今日はゆっくりと休んで、明日の授業に備えてください」
「あっ、お二人にちょっと相談したいことがあるんですけど」
バエルさんの背中から降りて、僕は念話の件を二人に相談することにした。
「……確かに、元希君の念話が通じる距離が延びれば、私たちも楽が出来るわね」
「でも、練習する機会が中々ありませんからね……」
「一応考えておくわね。元希君の方でも考えてみてね」
「もちろんです。僕の事ですし」
「言葉を発することが出来る式は、私たちも持ってませんからね」
そういったものは、専門的に式を扱っている人でも一握りくらいしか持っていないって聞くし、僕たちみたいに片手間で覚えた人間には、中々使役出来ないだろうしな……さて、念話の件はどうやって解決したらいいんだろうか……
「とりあえず、僕も休みます」
一礼して二人の前を辞して、僕も自分のテントに戻ることにした。
元希君、ちっちゃいし軽いからな……