意識を取り戻したのは、またしても架空世界で……別に問題は無いんだけども、僕が復活するまで架空世界に行くのはやめてくれないかなぁ……
「おっ、元希が気がついた」
「そろそろ開始の合図があるはずですので、元希様も準備してください」
もう僕が気を失っても誰も驚かなくなってる……まぁ一日一回以上気を失ってたら慣れちゃうよね……
「考え事? お姉さんに相談してごらん?」
「美土、元希君をからかってる時間は無いよ」
「あらあら、からかうなんて人聞きの悪い」
この緊張感の無い感じは良いんだろうけども、相手には秋穂さんが居るのに大丈夫なのかな? さっきの戦い方を見る限り、秋穂さんは今までの相手のようには行かない気がするのに……
「元希、アタシたちはフォローに回るから、元希が一気に決めて」
「秋穂さん以外にも元希様の実力を知らしめる必要がありますので」
「えっ、でもA組の人たちはさっきの試合を見てたんじゃ……」
A組は僕たちがB組と戦ってる時モニタールームに居たんだから、僕の魔法は見てるはずなんだけどな……
「さっき元希さんが気を失った時に、A組の愚か者が元希さんを馬鹿にしたのよ」
「ボクもさすがにあれはムカついた。その場で闇に落してやろうかと思ったけど、元希君が自分の力で黙らせれば良いんだって思ってやめておいた」
なんだか納得できないけど、止めてもらってよかった……御影さんにそんな事させたくないもんね。
「ところで、何時になったら合図があるのかな?」
「まさかもう始まってますの?」
「ちょっと待って……ううん、秋穂さんたちも動いてないよ」
影を飛ばしてA組の様子を確認したけども、誰一人動いてはいない……? 何か違う気配があるような……!?
「何でこの世界に竜が……」
「竜? この間倒した地竜ですか?」
「違う。能力が格段に上がってる……恵理さん! 聞こえてますか?」
駄目だ……通信が途絶えてる。もしかして何かのエラーでこの世界に竜が出現してるのかもしれない……
「御影さん、秋穂さんに知らせて」
「元希君は? 元希君の方が早く伝えられるよね?」
「影を飛ばすより携帯の方が早いでしょ。架空世界とはいえ圏外じゃないんだし」
「それで、元希は如何するんだ?」
「僕は竜を止める。皆はA組の人たちを秋穂さんと一緒に守ってあげて」
恵理さんと涼子さんの話では、僕たちと秋穂さん以外の新入生は基本魔法くらいしか使えないらしいし。
「元希様一人では危険ですわ! せめてもう一人前衛に……」
「大丈夫。僕はみんなを守るんだ!」
普段男らしくないんだし、こんな事態になっちゃった以上頑張らないと。
「分かった。でもA組の人たちの安全を確保出来たらボクたちも加勢するから」
「……分かったよ。でも危ないと思ったらみんなも避難してね。やられちゃっても架空世界だから大丈夫だとは思うけど、現実世界がどうなってるのかが分からない以上安全だとは思えないからね」
四人に任せて僕は竜の許に走る。入学式前に戦った地竜とは比べ物にならない強さ、これが本物の竜の能力なんだろうな……
「(大丈夫、怖く無い。僕が逃げたらみんなが危ないんだから)」
自分を鼓舞するように心の中でつぶやき、竜に気付かれないように近付き、光魔法でみんなが居る方向とは別の方向に誘導する。
「(あれは水竜? それとも氷竜かな……綺麗だなぁ)」
思わず見蕩れてしまったけども、相手は現実世界で言えばSランクモンスターだ。少しの油断で命を落してもおかしく無い相手なのだ。気を引き締めないと。
「(とりあえず牽制で……)風よ、多方面から敵に襲いかかかれ『ウインドスラッシュ』」
僕の場所を特定されないように影の魔法で気配を隠し、魔法発動の際に特定されないように多方面から攻撃できる魔法を選択する。
「(効いてないな……やっぱり初級魔法じゃ駄目か)」
架空世界だ、最悪やられちゃっても大丈夫……もし駄目でも、僕が時間を稼げばみんなが助かる可能性が出てくる。
「雷よ、最大限の威力で敵を焼き殺せ『サンダークラッシュ』」
相手が水竜ならこれで倒せるかな……でも、Sランクモンスターがこの程度ではやられてくれないだろうな……
「グルルル……」
「やっぱり駄目だよね」
今の魔法で完全に僕の場所がバレた。だけど水竜は僕に襲い掛かっては来ない……何でだろう?
「? 僕が攻撃した以外で怪我してる?」
足を引き摺ってるようだけども……これ、ホントにバーチャルなのかな?
僕は怖いと思う気持ちを封印し、水竜の足元に飛び降りる。これは……槍の穂先かな? 何でこんなものが刺さってるんだろう……
「グルルル!」
「うわ! 落ち着いて、今抜くから」
痛そうに暴れだした水竜に沈静効果のある匂いを嗅がせ、その間に刺さってる穂先を抜く。とりあえずこれで大丈夫かな?
「風よ、優しく包み込み傷を癒せ『ケアリング』」
回復魔法を掛け、水竜の足の傷を治す。何となくだけど、この子は悪い子では無い気がしたのだ。
「これで大丈夫だよ」
「グル!」
「あれ? どんどん小さくなって……」
「ギャァ!」
「これが君のホントの姿なの?」
掌サイズまで小さくなった水竜を持ち上げ、とりあえずみんなの場所まで戻ろう。
「元希! 竜は?」
「えっと……この子」
「小さいですわね……」
「さっきまで暴れてたんだけど、足の怪我を治してあげたら小さくなって懐かれちゃった」
「ギャァ!」
『元希君は使い魔を手に入れたのね』
「恵理さん……この子ってバーチャルじゃなかったんですか?」
『ごめんなさい。如何やら討伐部隊が逃がした水竜のようなの。でも悪い子じゃなさそうだし元希君の使い魔になったなら大丈夫よね』
よく状況が分からないけども、とりあえずこの子は僕が世話をすれば良いのかな?
「グア!」
さっきからほっぺたにすりすりしてきてるし、懐かれたって事で良いんだよね? 油断した隙に……って事は無いよね?
水竜の詳しい事は次回説明します