拠点に戻ってからも、僕は訓練の事を考えていた。今日の訓練は、それなりに収穫があったけど、一日で成果が出るとは思ってないからね……
「おい元希、考え事しながら食べてると零すぞ」
「え? ……あぁ、ごめん炎さん……」
食事中だったのを忘れて、僕はボーっとしてしまっていた。こんなんじゃいつ何かやらかしてしまうか分からないな……
「何考えてたんだ?」
「ちょっと今日の訓練の事を……それから、例の不穏な空気が漂ってる場所の式神から送られてくる情報の整理を」
「何か進展はありました?」
「今のところは……箇所も増えてませんし」
増えてないけど、減ってもいないので、何も改善されてないんだけどね……まぁ、原因が分からない限り、対処しようもないし……
「特訓って、さっき理事長や早蕨先生とやってたやつですか?」
「うん。念話と座標移動の練習をしてました」
「あたしたちも手伝えればいいんだけどな」
「炎さんたちは、新魔法の練習があるじゃないですか。それに、恵理さんと涼子さんに手伝ってもらえましたので、気にする必要はないですよ」
「ですが、元希様には私たちの練習に付き合ってもらっていますのに」
水奈さんが恐縮してるけども、あれは授業だからね……僕も参加しなきゃ単位もらえないし……
「そういえば、その二人は何処に行ったんでしょうね」
「あれ? ……そういえば恵理さんも涼子さんも気配がないですね」
美土さんに言われてから、僕は近くに二人の気配がない事に気が付いた。まぁ、あの二人が本気で隠れたら、僕じゃ気配を掴めないんだけど……
「ボクも探ってみたけど、半径二キロに気配は無かったよ……」
「調査にでも行ったんですかね? でも、それだったら元希君にも声を掛けそうなものですが」
「秋穂さん、僕は一応学生ですから、調査に出るには許可が必要なんですけど……そして、あの二人が僕を連れていくとも思えませんし……」
討伐ならまだしも、調査では僕よりあの二人の方が向いている。それに、万が一この拠点が襲われた場合、早蕨姉妹不在だと結界の維持に誰か回さなければいけない。おそらくそれは僕の担当になるだろうから、三人同時に長期離脱は出来るだけ避けるようにしてるのだ。
「元希がいてくれれば、あたしたちは遠慮なく戦えるしな」
「炎さんと秋穂さん、そしてバエルさんが前衛で、私と美土さん、御影さんが後衛のフォーメーションが採れますからね」
「いや……僕だって一人で結界を維持出来るわけじゃないんだけど……」
この身に宿る、リンとシンの力を借りたとしても、全方位の結界を維持するだけの魔力はかき集められないだろう。
「てか、こんな場所に攻め込んでくる物好きがいるかどうか……」
「日本支部の魔法師は攻め込んできそうだけどな」
炎さんの笑えない冗談に、僕は彼女から視線を逸らして二人の気配をもう一度探った。
「(……学園にもいないか)」
精度は落ちるけど距離を延ばして探ってみたけど、やっぱり見つけることは出来なかった……どこに行っちゃったんだろう……
何処に行ったのかは次回かな……