お風呂から出た後も、恵理さんと涼子さんの気配を探ってみたけど、やっぱりどこにも反応は無い。もしかしたらと思って電話を掛けてみたけども、電源が入っていなかった。
「あの二人が本気で隠れたら見つけられないしなぁ……でも、気配察知の特訓はお願いしてないし……」
座標移動と念話の特訓はお願いしたけども、気配察知はお願いした記憶はない。まぁ、こっちも苦手と言えば苦手な部類だから、恵理さんの発案で勝手に特訓されているのかもしれないけどね。
「見つかりましたか?」
「いえ……学園まで距離を延ばしましたけど、まったく見つかりません」
「理事長先生も早蕨先生も、大人ですので私たちが心配するのはおかしいのかもしれませんが、何も言わずにいなくなるのは心配ですよね」
「携帯の電源も入ってませんし、何処に行っちゃったんだろう……」
リーナさんの手伝いで急に出かけたのかもしれないけど、それでも何かしらの伝言はあってもおかしくはない。むしろあの二人が何も伝えずにいなくなる方が考えにくいんだけどな……
「……ん?」
「どうかしました?」
「いや……気のせい?」
一瞬だけこの近くに気配が生まれたけど、すぐに消えてしまった。気のせいだと決めつければ楽なんだけど、僕はどうしてもさっきの気配が気になってしまった。
「そう遠くないですし、ちょっと行ってきます」
「私も一緒に行きます。元希さん一人では心配ですし」
「……僕ってそんなに頼りないですかね?」
まぁ、炎さんより背も低いし、見た目も女の子みたいってよく言われるけど、一応攻撃魔法はそれなりに得意なんだけどなぁ……
「元希さんがお二人を心配するように、私も元希さんの事を心配しちゃうんですよ」
「そうですか……じゃあ一緒に行きましょう」
気配が生まれたのは、リンやシンが暴れていたあの雑木林。一応の平和は取り戻してはいるけども、あそこは未だに不安定な場所ではあるのだ。そこで次元の裂け目が出来、二人はその調査の為に別次元に行っている、なんて可能性もあるのだ。
「元希さん、式神じゃ確認出来ないんですか?」
「異次元だと無理ですね。次元の壁を移動できませんから」
「そうなんですね。じゃあやっぱり、お二人もご自身で調査している可能性が高いんですね」
「本当に調査なら、ですけどね」
別次元への移動も、僕より二人の方が向いているし、学生である僕を巻き込まないようにしたのなら、いろいろと納得がいく。だけど、本当に調査してるのかな……まだ次元の裂け目があることも、さっきの気配が本当に発生したものかどうかも分からないので、僕は半信半疑で雑木林へ向かった。
「……あっ! やっぱりそうだ。二人の気配がします」
「やっぱりあの雑木林でまた問題が?」
「いえ……これは、新たに出来た裂け目じゃなくって、残ってた裂け目を塞いでるだけのようですね」
「あら? 元希君にアレクサンドロフさん。こんな時間に散歩デートかしら?」
「お二人が何も言わずにいなくなってしまったので、心配で元希さんがずっと探していたんです。私はその付き添いです」
「姉さん、誰にも言わなかったの?」
「元希君の気配察知の特訓に良いと思って」
……やっぱり知らない間に特訓が始まってたんだ。でもまぁ、見つかってよかったよ……
生徒を危険から未然に防ぐ偉い教師