涼子さんと二人で向こう側の状況を探ると、ついこの前までとは比べ物にならないくらい混沌としていた。
「調べたのって一昨日くらいですよね?」
「さすがにこの状況はおかしいですね……何か人為的なものを感じます」
「ですが涼子さん、人の手で行われているものだとして、目的は何です?」
「嫌がらせ、ですかね」
誰が、何の目的で山に不穏な空気を流す嫌がらせをするのだろう……でも、場所を狙った嫌がらせじゃなく、僕たち――もっと言えば恵理さんと涼子さんを狙ったとするなら、その人物に心当たりがある。
「教頭が誰かを使って、あの山の秩序を乱している……とかですか?」
「可能性はあると思いますよ。パイプを繋いですぐですから、こちらの動きを把握しているのは間違いないと思いますし、何よりこの陰湿な嫌がらせ……あのハゲデブオヤジのやり方です」
涼子さんでもそんなことを言うんだなぁ……っと、感心するのはそこじゃない。
「ですが、あの周辺の田畑に影響が出れば、教頭先生にも影響があるんじゃ……」
「あのメタボオヤジは、学外からの支援が多いから、周辺農家に影響が出ても、あのハゲにはあまり影響が出ないのよね……生徒に影響が出ることまでは、考えてないんでしょうね」
「ですが、教頭は魔法師じゃないですよね? 支援者に魔法師がいるのでしょうか……」
「日本支部の連中は、あのハゲの手下みたいな感じだからね。おそらく水の母親を討伐するように仕向けたのもあのメタボハゲでしょうし」
なんだろう……だんだん教頭を現す言葉がひどくなっているような気が……
「とりあえず、対向魔法をこのパイプを通じて掛けておきましょう。元希君、手伝ってください」
「分かりました」
あの雰囲気は闇魔法だよね……光魔法の対向魔法を……
『元希よ、ここは俺がやろう』
「(シン? でも、大丈夫?)」
『当たり前だ! お前は俺を何だと思ってるんだ!』
『こら愚弟。元希に対する口の利き方がなってません!』
『あ、姉上……俺は神族でこやつはただの人間……』
『私たちが安定して力を発揮できているのは、元希が依代となってくれているからです! そのことを理解しなさい!』
喧嘩するのは良いけど、全部僕に聞こえてるんだよね……
「(とりあえず、シンを向こうの山に召喚すればいいんだね?)」
『そうだ。あれくらいの邪気、俺の力で祓ってやる』
『仮にも神ですからね、愚弟でも問題なく祓えるでしょう』
『姉上、その「愚弟」と言うのをやめていただけないでしょうか』
『呼ばれたくなければ、それなりの態度と結果を示しなさい。元希に迷惑ばかりかけて、今の貴方など愚弟で十分です』
あ、あはは……まぁ、シンがあの邪気を祓ってくれるのなら、それでとりあえずは解決出来るしね。
「(それじゃあ、お願いね)」
僕はパイプを通してシンを向こう側に召喚した。座標が若干ズレた気もするけど、まぁ誤差の範囲だし、とりあえず向こう側に行けさえすれば、シンの力なら問題なく祓えるもんね。
どんだけ嫌ってるんだよ……