その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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久しぶりに彼女が登場


調査結果

 一先ず片付いた山の異変だったが、まだ全員である魔法師を捕まえていないので、解決とはいかない。そこで僕と涼子さんは、恵理さんに送った式神の事を聞くために理事長室を訪れた。

 

「おー、元希ちゃん。久しぶりー」

 

「り、リーナさん!? 戻ってたんですね」

 

「ついさっき調査を終えてね。なんだか大変な事になってるらしいわね」

 

「とりあえずは落ち着きました。それで恵理さん、さっきの式神が捉えた魔法師の正体は分かったんですか?」

 

 

 リーナさんの調査報告も気になるけど、先あたっての問題であるこちらを優先した。

 

「さすがに日本支部の魔法師じゃなかったわね。どっかのフリーなんでしょうけども、残念ながら分からなかったわ」

 

「そうですか……尾行はつけているので、隠れ場所は分かると思いますよ。まぁ、式神に気づかなければですけど」

 

 

 あれだけの嫌がらせをしてくる魔法師が、式神に気づかないなんて思わないけどね……尾行はあくまでも、こちらが彼に気づいてたと知らせるためにつけたから、破られても問題は無い。

 

「あの中年メタボハゲとの繋がりは、今のところ見えてこないけど、絶対に関係してるわよ、あのオヤジは」

 

「相変わらずね、恵理の毒は。さてと、それじゃあ今度は私の報告が聞きたいのよね、元希ちゃん」

 

 

 顔に出ていたのか、リーナさんは僕を見てそんなことを言った。まぁ、最初から僕たちの為に動いていたのだから、報告を知りたがっていると分かっていたんだろうけども……

 

「ちょっと時間がかかったけど、そんなに大変な調査だったの?」

 

「忍び込んでからは簡単だったけど、それまでがね……あの田舎、完全に日本支部の手伝いをしていたわ」

 

「手伝い?」

 

 

 僕の記憶では、あの村に魔法師はいなかったし、日本支部の人間もいなかったと思うんだけどな……でも、リーナさんが調べてそう結論付けたのなら、何か証拠があったんだろうな。

 

「まず、元希ちゃんが教えてくれた施設だけど、今は稼働してなかったわね。でも、厳重な警戒と、監視カメラの充実と、中に入ってほしくなさそうな匂いがプンプンしたわね」

 

「それで、その施設に入れたんでしょ? もったいぶらずに教えなさいよ」

 

「まぁまぁ、そう慌てないの。調べた結果、何かの実験施設だって事が分かったの。それでそこからさらに詳しく調べたんだけど、どうやら動物実験をしてたっぽいのよね」

 

「動物実験? 新薬の開発でもしてたの?」

 

「違うわね。動物と言っても、獣じゃないわ。人体実験よ」

 

 

 ……確かに人間も動物だが、だったら最初から人体実験と言ってほしかった。

 

「人工魔法師を研究してたっぽいわね。残ってた資料から見る限り、かなりヤバい感じの実験だったらしいわ」

 

「それで、僕たちの出生との関係は?」

 

 

 僕が知りたいのは、まさにそこなのだ。リーナさんは一瞬ためらったけど、ため息を吐いて僕たちの調査結果を教えてくれた。

 

「あの施設に残ってた資料の中に、人体実験を受けた子供のリストが残ってたの。処分し忘れたんでしょうね。その中に、恵理も涼子も、そして元希ちゃんの名前も載っていたわ。つまり、貴方たちは人工魔法師と言う事ね。元々魔法の才能があったのか、それともその実験の成果なのかは分からなかったけど」

 

 

 リーナさんの言葉に、僕は頭の中が真っ白になった。人工魔法師、創られた存在。その言葉が僕の頭の中でリピートされているから、他の事を考えられなくなってしまったのだった。




十五、六歳の少年には受け入れがたい事だ……

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