一先ず片付いた山の異変だったが、まだ全員である魔法師を捕まえていないので、解決とはいかない。そこで僕と涼子さんは、恵理さんに送った式神の事を聞くために理事長室を訪れた。
「おー、元希ちゃん。久しぶりー」
「り、リーナさん!? 戻ってたんですね」
「ついさっき調査を終えてね。なんだか大変な事になってるらしいわね」
「とりあえずは落ち着きました。それで恵理さん、さっきの式神が捉えた魔法師の正体は分かったんですか?」
リーナさんの調査報告も気になるけど、先あたっての問題であるこちらを優先した。
「さすがに日本支部の魔法師じゃなかったわね。どっかのフリーなんでしょうけども、残念ながら分からなかったわ」
「そうですか……尾行はつけているので、隠れ場所は分かると思いますよ。まぁ、式神に気づかなければですけど」
あれだけの嫌がらせをしてくる魔法師が、式神に気づかないなんて思わないけどね……尾行はあくまでも、こちらが彼に気づいてたと知らせるためにつけたから、破られても問題は無い。
「あの中年メタボハゲとの繋がりは、今のところ見えてこないけど、絶対に関係してるわよ、あのオヤジは」
「相変わらずね、恵理の毒は。さてと、それじゃあ今度は私の報告が聞きたいのよね、元希ちゃん」
顔に出ていたのか、リーナさんは僕を見てそんなことを言った。まぁ、最初から僕たちの為に動いていたのだから、報告を知りたがっていると分かっていたんだろうけども……
「ちょっと時間がかかったけど、そんなに大変な調査だったの?」
「忍び込んでからは簡単だったけど、それまでがね……あの田舎、完全に日本支部の手伝いをしていたわ」
「手伝い?」
僕の記憶では、あの村に魔法師はいなかったし、日本支部の人間もいなかったと思うんだけどな……でも、リーナさんが調べてそう結論付けたのなら、何か証拠があったんだろうな。
「まず、元希ちゃんが教えてくれた施設だけど、今は稼働してなかったわね。でも、厳重な警戒と、監視カメラの充実と、中に入ってほしくなさそうな匂いがプンプンしたわね」
「それで、その施設に入れたんでしょ? もったいぶらずに教えなさいよ」
「まぁまぁ、そう慌てないの。調べた結果、何かの実験施設だって事が分かったの。それでそこからさらに詳しく調べたんだけど、どうやら動物実験をしてたっぽいのよね」
「動物実験? 新薬の開発でもしてたの?」
「違うわね。動物と言っても、獣じゃないわ。人体実験よ」
……確かに人間も動物だが、だったら最初から人体実験と言ってほしかった。
「人工魔法師を研究してたっぽいわね。残ってた資料から見る限り、かなりヤバい感じの実験だったらしいわ」
「それで、僕たちの出生との関係は?」
僕が知りたいのは、まさにそこなのだ。リーナさんは一瞬ためらったけど、ため息を吐いて僕たちの調査結果を教えてくれた。
「あの施設に残ってた資料の中に、人体実験を受けた子供のリストが残ってたの。処分し忘れたんでしょうね。その中に、恵理も涼子も、そして元希ちゃんの名前も載っていたわ。つまり、貴方たちは人工魔法師と言う事ね。元々魔法の才能があったのか、それともその実験の成果なのかは分からなかったけど」
リーナさんの言葉に、僕は頭の中が真っ白になった。人工魔法師、創られた存在。その言葉が僕の頭の中でリピートされているから、他の事を考えられなくなってしまったのだった。
十五、六歳の少年には受け入れがたい事だ……