理事長につれられて、僕は「早蕨荘」に足を踏み入れた。見た目通り中も凄い豪華だ……これで家賃が月一万円って凄いな……
「姉さん! 掃除の途中で何処に……あら?」
「ただいま。入居者を連れて来たわよ」
「この子が東海林元希君?」
「えっと……東海林元希です、これから三年間此方でお世話になります」
理事長と二人かと思ってたけど、他にも住人が居た事に安堵した。
「ご丁寧にありがとう。私は私立霊峰学園教師の早蕨涼子よ」
「私の妹なの」
……理事長と先生と三人で生活するのだろうか。それだと余計に緊張しちゃうよ……
「あの僕やっぱり入学式まで近くで生活を……」
「大丈夫よ。荷物は既に送られてるから」
「何時の間に!?」
下見に来て入学式までの数日は近くの漫画喫茶で過ごそうと思ってたのに……荷物だってそのつもりで送ったのに……
「まったく姉さんたら……片付け放り出して何処に行ったかと思ったわよ」
「可愛い生徒が迷子になりそうだったから迎えにいったのよ」
「確かに、可愛いわね」
「あうぅ……」
これでも男なので、「可愛い」と形容されるのは嬉しく無いんだけどな……でも中学の時も女装したら似合いそうとか、ホントは女なんじゃないかって言われてたからな……理事長や先生が僕を見てそういうのも仕方ないのかもしれない……なんだか泣きたくなってきたよ……
「でも良かったわよね。元希君が入居してくれなかったら取り壊しだったんだから」
「ホントよね。理事長の私を差し置いて決定するなんて」
「しょうがないわよ。理事長といってもまだ姉さんは若いんだから」
そういえば理事長や先生は何歳なんだろう……女性に年齢を聞くのは失礼だよね……
「元希君、どうかしたのかしら?」
「うぇ!? な、なんでもないです……」
「そんな目でお姉さんたちを見つめて、案外厭らしいのかしら?」
「姉さん、あまり苛めちゃ可哀想よ」
早蕨先生に抱きしめられ、僕は身動きが取れなくなる……身長も高いし僕の力じゃ振りほどけないよね……
「それで、元希君は私たちに何を聞きたかったの?」
「えっと……理事長と先生はお幾つなんですか?」
「私は28よ」
「私は25」
その歳で理事長をやってるのには、何か理由があるのだろうか……でも二人共若いなぁ……
「さて、明日は魔法科新入生のトップ5を集めての顔合わせがあるから、元希君も参加してもらうわよ」
「……始めて聞きました」
「うん、初めて言ったから」
「姉さん!」
「大丈夫よ。元希君以外にはちゃんと通達してるから」
「そうじゃないでしょ……」
早蕨先生と僕の気持ちは恐らく一緒だろう……何で僕にだけ教えてくれなかったんだろう?
「細かい事は置いておいて、とりあえず元希君の荷物の整理の続きをやっちゃいましょう」
「えっ……続き?」
「もう結構終わってるのよ」
荷物と言っても当面の着替えくらいしか無いから終わっててもおかしくは無いのだけども、何で二人が僕の荷物整理をしてるんだろう……
「元希君はブリーフ派なのね」
「姉さん!」
「いいじゃない別に。それに涼子ちゃんだって見たでしょ?」
「あ、あうあうあう……」
お母さん以外の女の人に僕のパンツ見られちゃった……恥ずかしくて顔から火が出そうな気分だよ……
「元希君? おやまぁ、恥ずかしくて気絶しちゃってるわね」
「姉さんがからかうからでしょ」
「これで学年トップ、しかも一般教科も実技もだなんてね」
「人は見かけによらないんですよ」
……何か聞こえるけど、とりあえず今は何も言わないでおこう。恥ずかしくて起きてるのも嫌になったからね。
僕が次に目を覚ました時には、外は既に暗くなり始めていた。昼過ぎに此処に来たとはいえ、随分と気を失ってたんだな……
「お風呂……」
夕ご飯の前にお風呂に入るのが、僕の習慣で、それは恐らくこれからも変わることは無いんだろうと思っている。
「お風呂何処だろう……」
この「早蕨荘」の中を案内してもらう前に気を失ったので、詳しい場所が分からない……如何しようかな……
「ちょっとだけなら怒られないよね」
僕は自分の影を飛ばしてこの「早蕨荘」の内部を探検する。えっとお風呂の位置は……
「あった」
広いけどこれなら迷わずにいけそうだな。僕は影を元に戻してお風呂までの道を進んでいく。脱衣所も湯船も広いなぁ……僕の実家の半分はこの場所で埋まりそうなくらいだよ……
「一人で洗えるのかしら?」
「大丈夫ですよ……あれ?」
僕は一人でお風呂に来たはずだ。それなのに何で今話しかけられたんだろう……
「元希君だってもうすぐ高校生なんだから、これは過保護ですよ」
「でも、元希君って何だか構ってあげたくなるでしょ?」
「その気持ちは分かるけど」
振り返るとそこには理事長と早蕨先生が立っていた、裸で……
「ま、前を隠してくださいよ!」
「別に恥ずかしがる事は無いでしょ? これから一緒に生活するんだから」
「姉さん……理事長が生徒を誘惑しないの」
「仕方ないわね」
僕は本当なら逃げ出したかったのだけども、出入り口に理事長と早蕨先生が立っている為に逃げ出す事は出来なかった。
それならば湯船に逃げ込めばよかったのだが、それだと理事長の思う壺なのだ。なにせ湯船には逃げ場が無いから……
「それじゃあ私が元希君の頭と背中を洗ってあげるわ」
「じ、自分で出来ますよぅ……」
早蕨先生に助けを求めようとしたけども、先生も裸なので僕は視線を向けるのを躊躇った。異性の裸なんてお母さんくらいしか見た事無いもん……
「パンツ見られただけで恥ずかしがる元希君には、お姉さんたちの裸は刺激的過ぎたかしら」
「明日の説明なら後でも出来たでしょうね……」
「涼子ちゃんだってノリノリでついてきたでしょ」
「姉さんが暴走しない為の監視です!」
如何やら明日の説明をしにきてくれようだけど、お風呂でする意味はあるのだろうか……
「明日元希君の他に来る四人は、それぞれ魔法の大家の娘さんよ」
「
「魔法師は女性の方が多いって言うけど、実力者五人の内四人が女の子とはね。それともう一人は女の子より女の子っぽい男の子だし」
「ゴメンなさい……」
「謝らなくて良いのよ。元希君は元希君なんだから」
そういって理事長に抱きしめられたのだけども、直におっぱいが当たって僕は再び気を失うのだった……
気を取り直してすぐ、僕は誰が着替えさせてくれたのかを考えてまた気を失ってしまったのだった……
元希君の男のレベルはほぼゼロです