異変を知らせるために理事長室にやって来た僕だったが、何故かリーナさんに出迎えられて出鼻をくじかれそうになっていた。
「元希ちゃん、どうしたの?」
「いえ……恵理さん、再び異変です。状況を打破するために、直接赴いて結界を壊す事になったのですが、お手伝い願えますでしょうか?」
「もちろん。リーナも来る?」
「私はあんまり戦力にはならないわよ? 諜報がメインだし、魔力だって、三人と比べればカスみたいなものだし」
「比べる必要は無いでしょ? それに、リーナの魔法は魔力を大量に使わない、低燃費が売りなんだから、そう自分を卑下しないの」
恵理さんに誘われて、リーナさんも結界破壊に加わることになった。索敵能力は僕なんかより遥かに優れている人だし、結界を壊し終えた後に敵を見つけてくれるかもしれない。そうすればもう一度結界を張られても位置を捕捉してくれるかもしれないもんね。
「それで、あの子たちは来るの?」
「いえ、今回は僕たちだけでやるそうです。炎さんたちは晩御飯の用意をしてるみたいですし」
そもそも、今回の異変を掴んだのは、本当にたまたまだったのだろう。涼子さんが雑木林にいて、ちょうどそのタイミングで異変が起こったのだから……これが少しでも時間がズレていれば、気づかなかった可能性の方が高いのだから。
「それじゃあ、私は後からのんびり行こうかしら」
「何言ってるの。リーナも役に立ってもらうんだから、一緒に行くわよ」
「残念。じゃあ元希ちゃん、行きましょうか」
リーナさんに手を握られ、そのまますごい勢いで引っ張られていく……見た目はか細いけど、リーナさんは僕より力持ちなのだから、僕が踏ん張ったところで意味をなさない。男としてこの上なく情けないけど、多分僕が親しくさせてもらっている全員、僕より力があるんだろうな……御影さんにも勝てるとは思えないし。
「こら! リーナだけズルいわよ! 元希君、私とも手を繋ぎましょう」
「そんなこと言ってると、後で涼子に怒られるわよ?」
「バレなきゃいいのよ。帰りも何食わぬ顔で私たちが手を繋げばいいだけなんだから」
それはそれでどうなのだろう……そもそも、帰りも僕は引っ張られるのが決定しているのか……魔法の制御や魔力増量だけじゃなく、体力や筋力面でも鍛えた方が良いのだろうか……
異変を感じ取った山に到着する直前で解放された僕は、とりあえず息を吐いた。ここまで自分の足で歩いた感覚は無いけど、普段以上のスピードで動いたので疲れてしまったのだ。
「元希君、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です……ところで涼子さん、結界について何か分かりましたか?」
「そうですね……随分と魔力をつぎ込んで作られています。本当に一人で作ったのかが窺わしいくらいの魔力ですね」
「涼子ちゃんがいうくらいだから、相当な量の魔力がつぎ込まれているのね」
「うーん……私じゃ傷をつける事すら無理そうね」
リーナさんが結界を見てそう感想を漏らした。確かに、僕たち三人でも壊せるかどうか微妙なくらいの魔力を感じるもんね……これは、結構な重労働になるかもしれないな。
体力面は、元希君は心許ないですからね…