結界を壊すにあたって、まず必要なのは結界の全体像を把握する事だ。この中なら空間把握は僕の分野だろうと言う事で、僕が結界の全体像を図ることになった。
「見た感じはそれほど大きくなかったですから、範囲はそれほどではないと思うけどね」
「これだけ高密度、高濃度の魔力を注ぎ込んでるから、大きいのは作れないと思うわよ」
「元希ちゃんが集中してるから、ちょっと黙った方が良いかもよ」
リーナさんのツッコミで、恵理さんと涼子さんが口を押えた。別にそこまでしなくても大丈夫なんですが、まぁせっかくですし黙っててもらいましょう。
「半径五百メートル、という感じですね」
「意外と大きいわね」
「まぁ、一ヵ所壊せれば後は自然に崩れるでしょうし、私たちは何処か一ヵ所を壊すことだけを考えましょう」
「力技で、全ての箇所を同時攻撃するんじゃなかったの?」
「思いのほか大きいし、そんなことして魔力が尽きたところに襲撃を掛けられたらたまったものじゃないもの」
確かに、この結界を壊すには結構な魔力が必要になるだろう。全体同時攻撃なんてしたら、確実に三人の魔力が尽きる方が早いだろうな。
「やっぱりあの子たちも連れてきた方が良かったんじゃないの?」
「今更そんなこと言われてもしょうがないでしょ。リーナは私たちが攻撃してる間、周りを警戒しててほしいのだけど」
「それが目的だし、構わないわよ。後で元希ちゃんにキスしてもらうけど」
「何それ!? リーナだけズルいわよ!」
いや、僕まだ承諾してないんですけど……。何やら僕がキスする事が前提で話し合われているが、これは断った方が良いのだろうか……
「じゃあ、恵理も涼子も元希ちゃんにキスしてもらえばいいじゃない。元希ちゃんも、それでいいわよね?」
「うえぇ!? キスって……」
「ほっぺたくらい気にしないでしょ?」
「えっ……ほっぺた?」
「あら。元希ちゃんは私たちと本当のキスがしたかったのかしら?」
リーナさんのからかいに、僕は顔を真っ赤に染め上げた。勘違いを指摘されただけなら、ここまで赤くならなかっただろうけど、その悪戯っぽい笑みが、どうにも蠱惑的だったのだ。
「こらリーナ。元希君はそういったからかいに弱いんですから、ほどほどにしてくださいね」
「いい加減慣れてきてもいいころだと思うんだけどね。一緒にお風呂は問題なくなってきたんだし」
問題はありますけど、抵抗しても無駄だと諦めてきただけなんですよ。まぁ、そんなこと声に出せばまたからかわれるので黙ってますけど。
「そういえば、元希ちゃんってキスしたことあるの?」
「そう言う事は聞かないの。プライバシーってものがあるでしょうが」
「私の諜報能力の前に、プライバシーなんてあってないものよ」
それは自信満々に言う事ではないとおもうんだけどな……
「とにかく! 今は結界を壊すことに集中しましょう」
「あっ、誤魔化した」
「誤魔化したわね」
「誤魔化しましたね」
……三人とも、そんなにジッと見ないでくださいよ。恥ずかしいじゃないですか……
誤魔化すのは当然だと思います