恵理さんにおぶられて戻ってきた僕を、バエルさんが心配そうに出迎えてくれた。
「何があったんですか、元希さん!?」
「ちょっと魔力を使い過ぎただけよ。アレクサンドロフさんは元希君が無理しないように見張っておいてね」
「分かりました。無理しそうになったら、凍らせてでも止めます」
「だ、大丈夫だから! だからそんな怖い顔しないでよ」
バエルさんの顔を見れば、冗談ではなく本気だと僕でも分かる。下手に動こうとすれば、バエルさんの魔法で凍らせられちゃうんだ……
「うふふ、冗談ですよ、元希さん」
「う、うん……分かってますよ、バエルさん」
冗談だと言っているバエルさんだけど、その雰囲気は予断を許さない感じなのだ。バエルさんも十分に実力はあるから、魔力を消耗している今の状況じゃ抵抗出来ないしな……
「それじゃあ元希君、くれぐれも安静にね。元希君が回復しないと、アイツらを殲滅出来ないんだから」
「分かってますし、無理なんて出来ませんから」
「姉さん、テントに戻ったら話があります」
涼子さんの怖い声が、テントの外から聞こえ、バエルさんは何かあったのかと首を傾げた。実際何かあったのかと聞かれても、僕は答えないけどね……てか、恥ずかしくて答えられないからね……
「何があったんですか? 元希さんがこれほど消耗するなんて」
「例の結界を壊してきたんですけど、思いのほか頑丈でして……僕が持てる幻獣を全て召喚して、一斉攻撃したんですよ。そうしたら動けなくなってしまいまして……」
「それにしては、元希さんの魔力には若干の余裕が感じるのですが?」
「うっ……」
そこを聞かれても、僕は答えられない……だって恥ずかしいし、恵理さんの事情もあるだろうし……
「もしかして元希さん、魔力の供給を受けました?」
「あうぅ……」
「受けましたね?」
「……はい」
バエルさんに追及され、僕は観念して白状する事にした。魔力が枯渇しかけてしまったので、恵理さんに魔力を分け与えてもらったことを。
「ということは、理事長先生は元希さんと口づけしたと言う事ですね?」
「う、うん……」
バエルさんの視線が、僕の目から唇に下りて行っている気がする……そんなに見て何かあるのだろうか?
「元希さんの魔力は、どのくらい休めば回復するのですか?」
「えっと、明日一日大人しくしてれば、多分大丈夫だと思いますけど、それが何か?」
「そうですか。では、もう少し早く回復出来るようにしてあげます」
「? バエルさん、何をいっ……!?」
バエルさんの顔が間近にあって、抵抗しようにも時すでに遅し……バエルさんに唇を奪われてしまった。接触している部分から、バエルさんの魔力を感じる。顔は真っ赤になってるだろうけども、身体には魔力が駆け巡る感覚がしっかりとある。これなら明日一日普通に生活出来れば、まったく支障なく討伐に迎えるだろうな……
現実逃避気味にそんなこと考えながら、僕はバエルさんが離れてくれるまで口づけされ続けたのだった。
抵抗する必要がないな…