恵理さんに続きバエルさんにも口づけされたおかげで、僕の魔力は翌日には回復していた。
「おはよう、元希君。思ってたより早く回復したわね」
「え、えぇ……」
僕が気まずげに視線を逸らしたのを、恵理さんはあの事を思いだしたからだと勘違いしたようで、嬉しそうに笑っていた。
「元希君が大丈夫なら、今日中にでも仕掛けたいんだけど、どうかしら?」
「大丈夫だと思います。炎さんたちも一緒に行くのなら、僕も使う魔力が減るでしょうし、全快じゃなくてもいけると思います」
そう、全快ではないにしても、普通に戦う分には問題ないくらいの魔力はあるのだ。あまりのんびりしてると逃げられちゃうかもしれないから、仕掛けるのは早い方が良いだろうしね。
「それじゃあ、岩崎さんたちには元希君から伝えておいて。岩清水さんとアレクサンドロフさんには、私から伝えておくから」
「分かりました」
理事長室を辞して、僕は教室に向かう事にした。何で呼ばれたのか分からなかったけど、ただの確認だったので安心した。
「よう、元希。どこに行ってたんだ?」
「呼ばれたの見てたでしょ、炎さん」
「それで、理事長先生はどんな用事だったのですか?」
教室に戻ると、クラスメイトのみんなが出迎えてくれた。
「何考えてるの?」
「何でもないですよ、御影さん。それと、いきなり背後に回るのは止めてください」
いないと思ったらいつの間にか背後に現れた御影さんに苦笑いを見せて、僕は四人に恵理さんからの伝言を告げることにした。
「みんな、あそこら辺の山に不審者がいるのは知ってるよね?」
「ああ、知ってるぜ」
「今日の放課後、その不審者を捉えるためにまた出向くんだけど、みんなの力を貸してもらえるかな?」
「もちろんですわ! 元希様に頼まれて、断るなんてありえませんわよ」
「水奈の気合は兎も角、わたしたちもお手伝いさせていただきます」
「もちろんボクも。元希君はもう少しボクたちに頼ってくれてもいいと思う」
御影さんの言葉に、僕はみんなに遠慮していたんだと自覚させられた。出自が分かってから、更にその傾向が強くなっていたんだと、今更ながらに気付いたのだ。
「僕、そんなに遠慮してるかな?」
「してるだろ。何でも一人で抱え込んで、あたしたちはそんなに頼りないか?」
「そんなことないよ! むしろ、頼り過ぎて駄目になるかもって思ってるよ」
クラスメイトのこの四人だけではなく、秋穂さんやバエルさんも非常に頼りになる人だ。だから頼り過ぎる可能性があるから、どこか遠慮していたんだろうな。
「なら、もっとあたしたちを頼れよな!」
「そう、だね……もう少し頼るようにするよ」
「よし! それじゃあ放課後だな! しっかり休めよ」
炎さんに髪をわしゃわしゃと撫でられて、僕はくすぐったい思いになっていた。こんな僕にも普通に接してくれるみんなに、僕はどう報いればいいんだろうな……
「炎さん! どさくさに紛れて元希様とスキンシップを取るなんて許せませんわ!」
「わたしも元希さんを撫でたいですわね」
「ボクも」
なんか争いが起きたけど、これだけ楽しい思いが出来るのなら、たまにはいいのかな? 結局涼子さんが来るまで僕は四人に代わる代わる撫でられたのだった。
炎たちにとって、これが普通なのかもしれません