あぶりだしたわけではないけども、敵は面白いようにリーナさんの方向へと逃げていった。理由は、まだリーナさんが本気で仕掛けてないから、そこからなら逃げられると勘違いさせたからだ。
「これで終わりかしらね」
「リーナなら取りこぼしもないでしょうし、終わりでしょうね。諜報に長けてるリーナは、捕縛も得意だから」
そんな話をしてる間に、リーナさんの陰縫いが発動し敵の動きを止めた。抵抗しようとしている不審者たちだったが、リーナさんの催眠魔法が発動し、敵の動きを完全に止めた。
「これで終わりかしら……一人足りないわね」
「姉さん、前!」
捕らえた敵の数が合わないのを不思議に思っていた恵理さんの前に、隠れていた敵が襲いかかってきた。
「その程度で私に攻撃が当たると思ってるのかしら?」
侵入者の魔法が恵理さんに襲いかかったと思ったが、恵理さんが圧倒的な魔力でその攻撃を打ち消した。
「なっ……やはり化け物か!」
「人の事を化け物呼ばわりなんて、やっぱり日本政府の回し者ね。まっ、そんなことは捕まえて白状させればいいだけだけど」
恵理さんの攻撃魔法が侵入者に当たりふっ飛ばした。そして落ちたところにリーナさんの陰縫いが発動し、そのままもんどりを打つ事も許されずに止められた。
「まったく、人の事を化け物って呼ぶのは止めてもらいたいわね」
「恵理さん、無事ですか?」
無事だと言う事は分かってるけど、万が一と言う事もあるから確認したのだけど、その言葉が嬉しかったのか、恵理さんが僕に飛びついてきた。
「元希君、怖かったよー!」
「うわぁ!」
体格差もあって、僕は恵理さんを受け止めきれずに押し倒された。その僕を心配して、涼子さんが恵理さんを風魔法で僕の上から移動させた。
「姉さん、何やってるんですか!」
「だって、元希君が心配してくれたことが嬉しくて」
「だからって、姉さんの身体で元希君に抱き着けばこうなるって分かってたでしょうが!」
「感動の前にそんなこと考えられないもの」
「元希君、大丈夫ですか?」
涼子さんに抱きかかえられ、僕は何とか起き上がることが出来た。
「ちょっと腰を強く打ったみたいで、まだ少し痺れてます……」
「姉さん!」
「大丈夫よ」
そう言って恵理さんが回復魔法を使ってくれた。発動した瞬間に、僕の身体の痺れは取れ、違和感なく立つことが出来るようになった。
「恵理、涼子、敵は全部捕まえたけど、どうやって運ぶの?」
「転移魔法で学園で訊問するわ」
「じゃあお願いね。私は転移魔法得意じゃないから」
「はいはい、じゃあ元希君、こいつらを第二体育館の倉庫に転移させてちょうだい」
「僕がですか!?」
「私もフォローするけど、これだけの人数だと元希君がメインで私がフォローの方が簡単に運べるのよ」
恵理さんの言葉に、僕は苦笑いを浮かべながら頷いた。確かに男の身体を運ぶのには、恵理さんより僕の魔法の方が良いだろうし、散々特訓に付き合ってもらったんだから、これくらいはやらなきゃね。
敵が弱いのか、元希君たちが強いのか……