美土さんに背負われながら、僕は水に報告するために村を訪れた。護衛の炎さんも一緒だが、本当に護衛の意味はよく分からない状況なんだよね……
「おお、主様じゃないか。どうかしたのか?」
「いや、山に潜んでた魔法師は捕獲したから、その報告に来たんだけど」
「そうかそうか、わざわざすまんかったな。それじゃあ報酬として、米俵三つと綺麗な水を六ℓ程持っていくと良い」
「そんなに!? 重いと思うんだけど……」
「そこはほれ、主様は転移魔法が使えるじゃろ」
確かに、万全の状態なら使えなくはないけど、今の僕は魔力の消費が激しく、自分の足で歩くことも出来ない状況なのだ。
「何なら、わしの魔力を分けてやってもいいぞ?」
「魔力を分けるって、どうやるんだ?」
炎さんが興味を示したけど、魔力を分ける方法ってまさか……
「なに、難しい事は無い。風神の娘よ、少し主様を下ろしてはくれんか?」
「分かりました」
水の指示に従い、美土さんは僕を背中から下ろした。立つのがやっとな僕は、水がしようとしてる事を理解していても逃げ出す事が出来なかった。
「犬に噛まれたと思えばよいじゃろ」
「ちょっ、水……」
頭を押さえつけられ、僕は抵抗する術を完全に失った。力でも水の方が上だから、押えられちゃったら動かせないんだよね……
案の定、水は僕の唇に自分の唇を重ねてきた。人前でする事じゃないと思うんだけどな……人がいなければ良いと言うわけでもないんだけど……
「あっー! 水だけズルいぞ! あたしも分けてやるよ」
「ほれ、わしが押えとる間にしてしまえ」
「では、わたしも元希さんに魔力をお分けしますね」
炎さん、美土さんと順にキスをしてきたが、僕は何のためにこんなことをされているのだろうか……報酬を拠点に運ぶために魔力を回復させられているのだが、ぶっちゃけて言えば、水の一回で事は足りているのだ。
「さあ主様、この報酬を拠点へと転移させるのじゃ。追加で採れたての新鮮な野菜もつけてやろう」
「それって、水が勝手に決めて良いものなの?」
「問題なかろう。わしに供えられたものじゃし」
「……神様なんだから、お供え物を報酬にするのはどうかと思うよ」
これを食べた僕たちに罰が下るなんて事は無いよね? 何だか不安なんだけど……
「それじゃあ転移も終わったし、また美土が元希を背負って帰ればいいんだな? 普通に歩いて帰ると、理事長辺りに何かしたってバレそうだし」
「そうですね。水奈さんが暴走しかねませんし、元希さんはわたしが背負っていきますね」
「……お願いします」
自分で歩いて帰れるなら、そうしたいところなのだが、ついさっきまで立てなかった僕が普通に歩いて帰ったら怪しまれるだろう。てか、転移魔法を使った時点で、恵理さんと涼子さん、リーナさんとバエルさんには何があったのかを知られてるんだけどね……
「それじゃあ主様、また何かあったらよろしく頼むぞ」
「うん……何もないのが一番だけどね」
水の言葉に、僕は力のない言葉で返し、そのまま美土さんに背負われたのだった。なんだか情けない恰好だとは思うけど、拠点に着いた途端に襲われる心配が減るんだから、少しは我慢しないとね。てか、男として唇を奪われ続けるというのはどうなんだろうな……そう考えると本当に情けなくなってきたから、とりあえず考えない事にしよう。
食べ物とキス、どっちが報酬だ?