その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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回復の為にしてたはずなのに……


疲労困憊

 やっとの思いで恵理さんたちから解放してもらった僕は、もう精根尽き果てた気分でテントに戻ってきた。

 

「お帰りなさい、元希さん。大丈夫ですか?」

 

「バエルさん……ちょっと大丈夫じゃないかもしれないです……」

 

 

 倒れそうになったところを、バエルさんに支えてもらって、漸く僕は寝袋にたどり着いた。

 

「いったい、何をしたらここまで疲れ果てるんです?」

 

「色々ありまして……」

 

 

 バエルさんなら、話を聞いた途端に襲いかかってくるなんて事はないだろうから、僕は不審者を転移させた後の事をバエルさんに話す事にした。

 

「――というわけです」

 

「それは……大変でしたね」

 

「魔力は回復しましたけど、その分気力と体力が消耗した感じですね」

 

 

 こんなことを言えば、同性に怒られるかもしれないけど、もう当分キスはいいかな……するたびに気力と体力を奪われる感覚に陥るから、魔力が回復しても結局は疲れてる事には変わらないしね。

 

「まさか一日に五人にキスされるとは思ってなかったので、ちょっと疲れました……晩御飯まで寝ます」

 

「そうですか。ゆっくりとお休みください」

 

 

 バエルさんに優しく包まれるような声でそう言われ、僕は一気に眠りの世界へと落ちて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰かに揺すられ、僕はゆっくりと目を覚ました。

 

「おっ、やっと起きた」

 

「炎さん? あれ、何か用ですか?」

 

「もうすぐ飯だから、顔洗ってさっさと準備してくれってさ」

 

「もうそんな時間ですか……」

 

 

 ついさっき寝た感じだが、確かにあれから一時間くらい過ぎていた。まだ体力は回復してないけど、ご飯を食べなきゃ更に回復しないだろうしね。

 

「何でそんなに疲れてるんだ? 帰りは美土に背負ってもらって、殆ど歩いてないだろ」

 

「魔力が回復した分、気力と体力が消耗した感じなんですよ」

 

「そうなのか? 元希くらいの歳なら、キスしたら喜んで普段以上の力を出せそうなんだがな」

 

「知りませんよ、そんなこと……」

 

 

 だいたい、僕も炎さんも、同年代の男子の知り合いなんて殆どいないじゃないですか……自分で思って情けないな……

 

「我妻も、たぶん元希と同じこと言うかもしれないが、他の連中はきっとあたしの思ってる通りだと思うぞ」

 

「健吾君はね……あんまりそう言うことに興味が無いって言ってたもんね」

 

 

 唯一と言ってもいい同性の知り合いである健吾君は、僕に似た考えを持っている為参考にならないようだ。今度聞いてみようと思ったけど、同じ答えなら別に良いかな。

 

「とにかく、さっさと顔洗って食堂に来いよ」

 

「分かりました」

 

 

 テントから出ていく炎さんを見送って、僕は欠伸を一つしてから寝袋から出た。顔を洗うにしても、とにかくこの眠い目を開かなければ歩くことも出来ないしね……いや、歩くことは出来るか。ものにぶつかる恐れがあるけど。

 

「くだらない事考えてないで、さっさと顔洗いに行こう」

 

 

 自分で自分にツッコミを入れて、僕は眠い目を擦りながらお風呂場へと向かった。水を使うなら、あそこか調理場しかないもんね。




バエルさんが唯一の癒しになりかけてる気が……

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