クラス対抗戦も無事に終わって、今日からいよいよ授業がスタートする。本当なら昨日からのはずだったんだけども、水の事があって対抗戦が一試合だけ昨日に延期されちゃったからね。
「でも魔法科の授業って何をするんだろう……基礎をするのかな?」
普通に考えたらそうなんだろうけども、僕たちのクラスはすでに魔法を扱えるしな……でも僕は独学だから基礎を教えてもらえるなら嬉しいな。
「おはようございます、恵理さん、涼子さん」
今日の朝ごはんは恵理さんが担当だったので、僕は昨日よりものんびりと水と遊んでいた。まだ二日しか一緒に生活してないけども、水は僕に懐いてくれている。
「おはよう。今日も可愛いわね」
「姉さん。それは挨拶にならないんじゃないかしら?」
挨拶と共に抱きつかれて、僕は窒息しそうになる。高校生になれば背が伸びるかと思ってたけども、やっぱりそんなにいきなり伸びる訳も無いし、中学でもそれほど伸びなかったんだから高校でも駄目なのかな……
「水の様子は如何かしら?」
「元気ですよ。今も思いっきり水を噴出してましたし」
水竜だから当たり前なんだろうけども、あの勢いは驚いたな。
「そうそう。学園に水を連れて行っても大丈夫になったから、今日は一緒に連れて行ってあげたら? あの子もお留守番は寂しいだろうしね」
「姉さん、また権力を振りかざしたんじゃないでしょうね」
「大丈夫よ。正当性はこっちにあるんだから」
恵理さんの説明では、何時日本支部の討伐隊が水を狙うか分からない状況で、水を単独行動させるのは危ないという事らしいのだが、そもそも日本支部とはいえ簡単に学園の敷地内に入る事は出来ないんじゃないのかな?
「元希君には教えたでしょ? 副校長が支部長の派閥だって。だからいい加減な理由をでっち上げて討伐隊を学園に招き入れる事が出来ちゃうのよ」
「まぁ理事長の許可無くそんな事をすれば、副校長は学園に居られなくなるでしょうけどもね。ですよね、姉さん?」
「当たり前でしょ。ただでさえ今すぐ追い出してやりたいのにあのタヌキ親父」
見た事無い副校長先生のイメージが、ちょっと太った眼鏡の小父さんで固まった。実際にあったらギャップで驚くのかな? それともイメージ通りで驚くのかな?
「兎に角あの親父は元希君を追い出す事を計画してるみたいだから、元希君もあの親父のいう事は信じちゃ駄目だからね」
「あのぅ、僕副校長先生に会った事無いんですが……」
「そうでしたね。でもあえて会う必要は無いですよ。元希君の純粋な心が穢れちゃうだけですから」
恵理さんも涼子さんもよっぽど副校長先生が嫌いなんだなぁ……僕は会った事も無い副校長先生の事が少し気になった。
初めての授業で緊張したけども、意外とスムーズに授業は進み今はお昼休み。僕たちは教室でお弁当を食べる事にした。
「ねぇ、皆は副校長先生ってどんな人か知ってる?」
今朝『早蕨荘』で話題になったので、クラスメイトの四人にも聞いてみる事にした。ちなみに水は教室の隅でお昼寝をしているので今は大人しいのだ。
「副校長? そんな人居たっけ?」
「確か日本支部長と懇意にしてる早蕨理事長を追い出そうとしてる派閥の人ですよね?」
「でも元希さんは何でその副校長の事をわたしたちに?」
「うん……水を狙って日本支部の討伐隊を動かすかもしれないって今朝恵理さんが言ってたからね」
「そうなの? あんなに可愛い子を討伐するなんておかしい」
御影さんと水は妙に意気が合いたった数時間で仲良しになっているのだ。僕よりも御影さんが主のほうが水も喜ぶんじゃないだろかとも思うくらいに、二人はすぐに仲良しになったもんね。
「どうも恵理さんと涼子さんの二人と、今の日本支部長の間に確執があるみたいで、水の親が討伐された理由もどうやら二人へのあてつけらしいって」
「確かに、あの水竜様は討伐されるべき魔物ではありませんでしたし」
「水奈、知ってるの?」
「氷上家では毎年水竜様にお供え物を献上してましたので」
そうなんだ……水の親竜は水奈さんのお家でも守り神として崇められてたんだね。
「ですので今回の水竜様討伐の詳しい経緯を日本支部に説明を求めたのですが、無視されてしまったのですよね。なるほど……そんな理由では氷上家を納得させる事は出来ませんわね」
「日本支部は魔法の大家全てを敵に回す覚悟があるのかな?」
「氷上家が敵対を表明すれば、我が風神家も敵対表明しますもの」
「ウチもすると思うよ。長い付き合いだし」
「当然アタシの家も敵対表明するだろうね。水奈の家が崇めてた神様を殺したんだ。敵対理由としては十分だ」
炎さんが言ったように、水奈さんのお家を敵に回すと、残りの大家も敵対する事になるようだね。それだけこの四人の絆は強いんだろうな。
「そのときは元希、お前も手伝ってくれるよね」
「もちろんだよ。水の親を討伐した日本支部の魔法師も、その命令を下した人も許せそうに無いもん」
僕と水が出会うきっかけにはなったけども、正当性の無い討伐はただの虐殺だ。そんな事が許されるなんて納得出来ないもんね。
「それに多分だけど、恵理さんと涼子さんも手伝ってくれると思う。水の親竜と二人は知り合いだったらしいから」
「そうですか。では正式な回答が着たらお知らせしますわね。もちろん無回答は敵対表明と受け取りますけどね」
水奈さんがちょっと怖い笑みを浮かべた。炎さんや美土さん、御影さんは見慣れてるのか何も反応しなかったけども、僕はちょっとだけ震えた。だってあの水奈さんがあんな笑みを浮かべるなんて思って無かったんだもん……
次回ちょっと急展開?