教頭がいなくなった日から数日後、今日は正式に涼子さんが新教頭として就任する事になっているため、その発表を行う朝会が開かれる事になっている。前もって前教頭の問題をそれとなくリーナさんが噂したお陰で、ほとんどの生徒が涼子さんの教頭就任に賛成してくれている。だけど、やはり全員というわけには行かず、特に教頭のコネで就職先が決まっていた普通科三年生からは不満が漏れているのだ。
「実力以上の評価をされて舞い上がってる人間に、早蕨先生の苦労が分かるとも思えないけどな」
「あっ、健吾君」
クラスごとに集まるとか、そういった決まりも無いので、健吾君がここにいても不思議ではない。だけど、この辺りは魔法科の生徒が集まっているため、健吾君は結構目立っていた。
「前教頭の悪事の噂は俺も聞いた。すべてが本当かどうかは分からないが、少なからず本当の事が混ざってるのは間違いない。だったら俺は、前教頭を庇う必要は無いと思うぞ」
「健吾君は、前教頭に目をつけられてたんじゃないの?」
「なんか集会に誘われたが、気味が悪いって言って断った。それがあそこで騒いでる集団ってわけだ」
健吾君が指差した場所では、前教頭が囲っていた普通科の生徒たちが、涼子さんに罵声を浴びせていた。だがその集団よりも涼子さんを支持する普通科の生徒の方が多く、次第に罵声は聞こえなくなっていった。
「前教頭の庇護が無くなったんだ、もうデカい顔はしてられないだろうな」
「何か問題があったの?」
健吾君の口ぶりでは、あの人たちは何か前教頭に守られていたようにも聞こえた。就職先の斡旋とか、その類だろうか?
「傷害事件のもみ消し、明らかに加害者だった事故を被害者として押し通し、示談に持ち込み多額の示談金を貰い、その一部をお礼として前教頭と、もみ消しに携わったお偉方に渡してたとか、そんな噂が絶えない連中だからな」
「それじゃあ、前教頭以外にも彼らに肩入れしてた人がいるんだね?」
「それが誰かは分からないが、明らかに日本政府の中でも偉い部類の人間だろうな。噂じゃ国会議員も関わってるとか言ってる集団だ。関わらない方が良い」
「今回の問題を完全に終わらせるためには、その背後の人間も探さないといけないと思うよ」
「だが、それは元希がするべきことではないだろ。大人がする事だ」
健吾君の言い分に、僕は反論しようとして――言葉が出てこなかった。確かにもう僕が首を突っ込むべきことではないし、事後処理は恵理さんたちに任せれば、とりあえずは安心して学生生活を送ることが出来る。だけど、ここまで関わって最後は無視、なんてことは出来ないよ。
「お前たちの合宿もどきも、とりあえずは終わるんだろ?」
「うん。いい加減外で生活するのもつらくなってきたからね」
夏が過ぎ、秋も深まってきた今日この頃、テント生活はそろそろ限界を迎えたので、僕たちは早蕨寮へ、炎さんたちは実家へ戻ることになったのだ。もちろん、放課後の特訓は続けていくのだが。
「元希たちは色々と事件に巻き込まれたんだから、冬休みはのんびり出来ると良いな」
「その前に試験があるけどね」
実技と一般教科の二つあるけど、とりあえずは問題なくパス出来そうだし、後は当日に体調を崩すとかが無ければ、無事に二学期も終わりを迎えるのだ。でも、まだ何か起こりそうなんだよね……
コネの範疇ならまだしも……