早蕨荘の掃除をしていると、外に誰かの気配を感じた。恵理さんか涼子さんが帰ってきたのかとも思ったが、どうやら違ったらしい。
「元希、手伝いに来たぜ」
「お掃除でしたら、私たちも手伝えると思いますわ」
「炎さん、水奈さんも。それに美土さんに御影さん、秋穂さんも……どうしたの?」
五人は家に帰ったはずなのに、手伝いに来て良かったのだろうか? 家の人との会話とか、そういったものがあると思うんだけどな……
「殆ど会話もないし、いても退屈だからね」
「元希さんが思ってるほど、家族というものは温かいものではないのですよ」
「そうなの? でも、みんなは仲良いよね」
「同じ境遇だったし、同年代で魔法力を競うのにこの四人はちょうどよかったんだよ」
「そんなこと言って、炎さんが勉強以外はいつも一位だったじゃないですか」
炎さんは魔法力だけなら、他の四人よりも群を抜いている。だけどそれを制御する能力と、新しい魔法に取り組む意力に欠けていたので、本当に力任せだったんだろうな……
「そんな事より掃除でしょ? 私と御影で庭先を掃いておくから、炎はそのゴミを燃しちゃって。水奈は庭に水まきして、美土は水気を風でまんべんなく均してちょうだい」
「寮の中は良いのか?」
「プライベート空間もあるでしょうし、元希君とバエルに任せるべきだと思うわ」
「そうですわね……元希様のお部屋に入ったら、我を忘れてしまいそうですし」
なんか怖い事言ってるけど、手伝ってもらえるならありがたい。僕とバエルさんは五人に頭を下げ、お礼を言った。
「水臭い事言うなって。友達だろ」
「元希様にはあの場所で生活してた時に散々お世話になりましたので、今日はそのお返しですわ」
「これくらいで返せる恩じゃないけど、少しずつね」
「これからも特訓とかでお世話になるんだし、少しは恩返ししておかないと」
「溜まる一方だと怖いものね」
別に気にする必要は無いのに、みんな律儀なんだよね。でもまぁ、僕も色々とお世話になってるのを考えると、恩返しをしてもらう立場じゃないのではないだろうかと思ってしまう。
「さっさと終わらせて、みんなで風呂に入ろうぜ!」
「炎さん!」
「それは内緒だと言ったではありませんか」
「……あぁ、そう言う事だったんだ。でもまぁ、手伝ってもらえるのなら、それもいいかな」
いつもなら抵抗するところだけども、せっかく人出が確保出来るんだから、それくらい我慢すればいいや。それに、抵抗したところでいつも引き摺られるんだから、抵抗するだけ体力がもったいないもんね。
「珍しいな。元希があっさり折れるなんて」
「それだけ掃除が大変なんだよ。さぁ、みんなもお喋りしてないで働いて」
「何だか元希君がイキイキしてる」
御影さんが驚いたように僕を見てるけど、別にイキイキしてるわけではないんだよね……早めに終わらせないと恵理さんと涼子さんが帰ってきちゃうし、そうなるとご飯の準備とかもしなければいけないから、とにかく早く掃除を終わらせたいだけなんだよ……まぁ、そんなことは声に出さないけどね。
真面目にやれば少なくても早く終わる……