炎さんの態度に首を傾げていた僕は、背後から近づいてくる気配に振り返った。
「あら元希君、掃除はもう終わったのかしら?」
「ええ。炎さんたちが手伝ってくれたので、思いのほか早く終わりました」
「それでお買い物ですか?」
「さすがに食材も何も無かったので」
恵理さんと涼子さんが僕の持っていた荷物を持ってくれたのだが、男としてかなり複雑な思いになった。男の僕より女性の二人の方が力持ちってどうなんだろう……しかも二人は見た目から力持ち、ってわけでもないのに……
「それで、元希君は何が気になってたの?」
「えっ? 何の話です?」
いきなり恵理さんに質問され、僕は思わず質問に質問を返してしまった。だけど恵理さんはそんな事気にした様子も無く、僕の質問に答えてくれた。
「岩崎さんが走っていった後姿を見て、元希君首を傾げてたでしょ? だから、何が気になってるのかなって」
「大したことじゃないと思うんですけど、炎さんたちも今日家に帰ったばかりなのに、こっちに来てていいのかなって。家族が心配とかしてるんじゃやないかと思ったんですけど」
「元希君、知らなかったの?」
「何をです?」
驚いた表情で僕を見る恵理さん。僕はその表情を見て再び首を傾げた。知らないのと言われても、何のことだかさっぱり分からないから、この反応は仕方なかったんだけど、僕の反応を見て、恵理さんは納得したように二度頷いた。
「岩崎さんだけじゃなくって、魔法大家四家全ては、私たちではなく日本政府側についたのよ。だから今岩崎さんたちはそれぞれの当主と折り合いが悪いのよ」
「こっち? 日本政府側? いったい何の話です?」
「私たちと日本政府とに確執があるのは元希君も知ってますよね」
「ええ。何度か衝突してるのを見てますし、僕も難癖をつけられたので言い返しましたし」
それと炎さんたちが家族と折り合いが悪いのと、何か理由があるのだろうか?
「それで、本格的に衝突した時、日本政府は魔法大家四家に手を貸してくれと頼み、四家全てがそれを承諾しました。つまり、本格的に私たちと日本政府が戦うことになった時、岩崎さんたちは日本政府の味方をしなければならなくなったのです。それが気に入らなかったので、彼女たちに頼まれあの場所で生活していたのです」
「そうだったんですね……僕はてっきり、雑木林の管理とか、そう言った理由だと思ってました」
「私たちがあそこで生活していた理由は、元希君が言った通りです。ですが、その理由だと岩崎さんたちがあそこで生活していた理由にはなりませんよね?」
まぁ、そうだよね……でも、炎さんだけなら「楽しそうだから」って理由で納得できるんだよな……でもそうか。日本政府と本気でぶつかるときが来た場合、炎さんたちは敵になるのか……それは嫌だな。
「だからなるべく岩崎さんたちは元希君の側にいるんだと思うわよ。衝突の時が来ても、元希君の味方でいられるようにって」
恵理さんがそうしめくくり、僕たちは早蕨荘へと歩を進めたのだった。
名家と言われる家にも、色々とあるんだろうな……