まさか炎さんたちにあんな事情があるとは思ってなかったな……何か家に居辛い理由はあるのかもしれないとは思ってたけど、まさかあんな理由だったとは……
僕は早蕨荘に到着してしばらくの間、炎さんたち四人をジッと見つめていた。魔法大家の四人は分かるけども、秋穂さんはどんな理由でここに来たのかが気になったので、視線を秋穂さんに移すと、バッチリ目が合ってしまった。
「元希君、今炎たち四人を見てたよね? 何かあるの?」
「えっと……何でもないですよ?」
我ながら下手な嘘だなと思う。当然の如く秋穂さんに不審がられてしまった僕は、この場から立ち去ろうと身体を反転させたが、あっさりと秋穂さんに捕まってしまった。
「逃げることないじゃない。さぁ、お姉さんに話してみなさい?」
「お姉さんって、僕と秋穂さんは同い年じゃないですか……」
見た目だけでは、僕の方が高校生に見られないだろうけども、同い年なんだからお姉さんって表現は適当ではないと思うんだけどな……
「細かい事は言わないの。大丈夫、炎たちには聞かせないから」
そう言って秋穂さんは、僕を部屋の中へと連れ込んで鍵を掛けた。この部屋は僕の部屋だから良かったけど、恵理さんや涼子さんの部屋という可能性は考えなかったのかな……
「さぁ、何で炎たちを見つめてたの? もしかしてあの中の誰かを好きになったとか?」
「? みんな好きですけど、そういう理由で見てたわけじゃないです」
「それじゃあ何で?」
この状況が続けば、いずれ誰かに僕たちがいない事がバレ、そして僕が何かを悩んでいると言う事を知られてしまうだろう。仕方ない、ここは素直に秋穂さんに聞くことにしよう。
「えっと……恵理さんから炎さんたちがここにいる理由を聞いて、それで秋穂さんは何でここに来たんだろうって思っただけです」
「炎たちの理由? あぁ、家が日本政府側に味方するってあれね。私も似たような理由よ。ウチも何かあったら日本政府に力を貸すかもしれないって話し合いがあって、私は気に入らなかったから家から遠ざかるようになったわけ。これで納得した?」
「理解はしてませんが、納得は出来ました」
「……どういうこと?」
僕の言い回しがおかしかったのか、秋穂さんは首を傾げて僕の目を覗き込んできた。多分韜晦は許さないという意思表示なんだろうけども、そこまでしなくてもちゃんと説明するのに……
「僕には家族と呼べる相手がいないので、どうしても家族間の事は理解出来ません。何で家族間で争うのかとか、意見が食い違って気まずくなるのか、とかは。でも、炎さんたちがここに来た理由は納得しました。家に居辛いからという理由は、何となく分かりますから」
今思えば、僕も日が落ちるまであの家に帰る事を躊躇っていたのかもしれない。母親の為に、少しでも手伝いをしようというのは建て前で、本当は気まずかったのかもしれないな。
「とりあえず、炎たちには直接聞かない事。あの子たちは元希君に知られてるなんて思ってないんだから」
「分かりました」
僕が素直に頷いて答えると、秋穂さんは優しく微笑んで、僕の頭を撫でたのだった。
秋穂もお姉ちゃんポジションっぽくなってきたな……