その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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探す必要は無いですが……


元教頭の気

 家に帰る分の体力も使い果たした四人は、特例として早蕨荘で一日面倒を見ることになった。面白そうだからと、秋穂さんもついてきたんだけど……

 

「だから言ったんだよ。無理しても良い事ないって」

 

「これはこれでいい事だと思うぜ。家に帰らなくてよくなったんだから」

 

「今日だけだからね。明日は無茶だと判断した時点で僕が敵を全部倒すから」

 

 

 そんなことしたら、今度は僕が動けなくなりそうだけど、こう何日も家に帰らなかったら、余計に溝が深くなっちゃうからね。

 

「とりあえず、四人はお風呂でスッキリしてきなさい。その間に元希君と私たちで晩御飯の準備を済ませちゃうからさ」

 

「岩清水さん、監視をお願いできますか?」

 

「分かりました。ほら四人とも、お風呂場に行くわよ」

 

 

 秋穂さんに先導され、炎さんたち四人はお風呂場へと進んでいく。あの五人は寮生ではないので、あのルールは適応しないらしい。それは五人も了承済みだ。

 

「それにしても、まさか帰れなくなるほど体力を消耗させるとは……」

 

「余程家にいたくないのでしょうね……」

 

「今日は仕方ないけど、明日、明後日と続けられると困るわよ……」

 

「大丈夫です。明日は軽めの特訓で終わらせる予定ですから」

 

 

 微妙な立場にあるのは、僕たちも同じなので、その事を理由に炎さんたちには納得してもらっている。

 

「元希君も大変ね。馬鹿どもだけじゃなくって、クラスメイトたちも気にしなきゃいけないんだから」

 

「それは恵理さんや涼子さんだって同じですよね? ましてや二人は、他の問題もあるわけですし」

 

「あのハゲオヤジの事? 恐らくもうくたばってるんじゃない? それか消されてるか」

 

「利用価値がなくなったあんなメタボ、消した方が良いですからね」

 

 

 物騒な事を平然と言い放つ二人の隣で、バエルさんが首を傾げていた。

 

「どうかしたの?」

 

「いえ、理事長や早蕨先生の能力なら、逃げた元教頭を探すことが出来るのではないかと思ったのですが……」

 

「気を探るなら出来るけど、そんな簡単に見つかるような場所に逃げてないでしょうし、消されてても同じよ、それは。簡単に分かる場所に捨てるわけないし、もし簡単に分かる場所なら、それは見せしめでしょうしね」

 

「探すだけ無駄です。それに、あのメタボの気なんて、覚えてないですし」

 

 

 あっさりと言い放った涼子さんに、僕とバエルさんは驚きの表情を浮かべる。仮にも同僚だったのだから、それくらいは覚えていて当然だと思っていたからだ。

 

「元希君なら、あのメタボハゲの気も覚えてるんじゃない? 元希君は優しいし、あんな屑でも気くらいは覚えててあげてるでしょ?」

 

「まぁ、覚えてますけど……」

 

 

 僕の索敵は、二人に比べれば精度が落ちるし、範囲も狭い。それにもう探した後だし、もう一回やっても変わらないと思うんだけどな……

 

「とりあえず、探すだけ無駄のハゲオヤジなんて忘れなさい。どっかに死体があるかもしれないけど、どうせ判別出来ないくらい滅多打ちされてるでしょうから、間違っても見つけないように」

 

 

 食欲のなくなることを恵理さんが言ったため、僕とバエルさんは夕ご飯を殆ど食べなかったのだった。




きっちりと反省させなければいけませんしね……

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