家に帰る分の体力も使い果たした四人は、特例として早蕨荘で一日面倒を見ることになった。面白そうだからと、秋穂さんもついてきたんだけど……
「だから言ったんだよ。無理しても良い事ないって」
「これはこれでいい事だと思うぜ。家に帰らなくてよくなったんだから」
「今日だけだからね。明日は無茶だと判断した時点で僕が敵を全部倒すから」
そんなことしたら、今度は僕が動けなくなりそうだけど、こう何日も家に帰らなかったら、余計に溝が深くなっちゃうからね。
「とりあえず、四人はお風呂でスッキリしてきなさい。その間に元希君と私たちで晩御飯の準備を済ませちゃうからさ」
「岩清水さん、監視をお願いできますか?」
「分かりました。ほら四人とも、お風呂場に行くわよ」
秋穂さんに先導され、炎さんたち四人はお風呂場へと進んでいく。あの五人は寮生ではないので、あのルールは適応しないらしい。それは五人も了承済みだ。
「それにしても、まさか帰れなくなるほど体力を消耗させるとは……」
「余程家にいたくないのでしょうね……」
「今日は仕方ないけど、明日、明後日と続けられると困るわよ……」
「大丈夫です。明日は軽めの特訓で終わらせる予定ですから」
微妙な立場にあるのは、僕たちも同じなので、その事を理由に炎さんたちには納得してもらっている。
「元希君も大変ね。馬鹿どもだけじゃなくって、クラスメイトたちも気にしなきゃいけないんだから」
「それは恵理さんや涼子さんだって同じですよね? ましてや二人は、他の問題もあるわけですし」
「あのハゲオヤジの事? 恐らくもうくたばってるんじゃない? それか消されてるか」
「利用価値がなくなったあんなメタボ、消した方が良いですからね」
物騒な事を平然と言い放つ二人の隣で、バエルさんが首を傾げていた。
「どうかしたの?」
「いえ、理事長や早蕨先生の能力なら、逃げた元教頭を探すことが出来るのではないかと思ったのですが……」
「気を探るなら出来るけど、そんな簡単に見つかるような場所に逃げてないでしょうし、消されてても同じよ、それは。簡単に分かる場所に捨てるわけないし、もし簡単に分かる場所なら、それは見せしめでしょうしね」
「探すだけ無駄です。それに、あのメタボの気なんて、覚えてないですし」
あっさりと言い放った涼子さんに、僕とバエルさんは驚きの表情を浮かべる。仮にも同僚だったのだから、それくらいは覚えていて当然だと思っていたからだ。
「元希君なら、あのメタボハゲの気も覚えてるんじゃない? 元希君は優しいし、あんな屑でも気くらいは覚えててあげてるでしょ?」
「まぁ、覚えてますけど……」
僕の索敵は、二人に比べれば精度が落ちるし、範囲も狭い。それにもう探した後だし、もう一回やっても変わらないと思うんだけどな……
「とりあえず、探すだけ無駄のハゲオヤジなんて忘れなさい。どっかに死体があるかもしれないけど、どうせ判別出来ないくらい滅多打ちされてるでしょうから、間違っても見つけないように」
食欲のなくなることを恵理さんが言ったため、僕とバエルさんは夕ご飯を殆ど食べなかったのだった。
きっちりと反省させなければいけませんしね……