その少年全属性魔法師につき   作:猫林13世

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これでも神様ですからね……


水の言葉

 ゆっくりと結界の中に侵入して、僕たちは水の姿を探した。といっても、気配はするのでそちらの方に向かうだけなのだが。

 

「おお、主殿ではないか。待っていたぞ」

 

「水、とりあえずは無事なんだね?」

 

 

 簡単にやられるとは思っていなかったけど、それでも心配は心配だったのだ。無事な姿を見て、とりあえずは安堵する。

 

「まぁな。あやつら、今回は結構大掛かりな準備をしているからの。わざわざ村民を逃がすあたり、今回で決めると意気込んでいるのかもしれぬ」

 

「決めるって、何をさ」

 

「決まっておろう。お主らとの因縁じゃよ」

 

「因縁って……向こうが勝手に私たちに難癖をつけて来るだけなんだけど?」

 

「恵理たちは難癖だと思っておっても、向こう側はそうは思ってないんじゃろうて。全属性魔法師などという、ある意味兵器を造りだしてしまった事への償いとでも思っておるのかもしれん」

 

「兵器って……水様、私たちは人間です」

 

「じゃが『普通の』人間とはいえんじゃろうて。まぁ、魔法師という部類は、本当に普通の人間からしてみれば些細な違いはあれ違う人種じゃと思われておるのだろうがの。その中でも、お主ら三人、全属性魔法師は魔法師から見ても異質なのじゃろう」

 

 

 水の言葉に、僕たちは言葉を失ってしまった。確かに僕たちは普通の人間でもなければ、普通の魔法師でもない。だけどそれは望んでそうなったわけではなく、何かしらの実験の影響であることは調べがついている。しかもその原因は日本政府側にあるのに、日本政府は僕たちが勝手に生まれ、勝手に仇を成す存在だと決めつけているのだ。

 

「まぁ、ワシは主様の使い魔じゃから、最後までお前たちの味方をするつもりじゃ。例えこの身が滅ぼされようが、その気持ちに変わりはない。どうやら、アマもそのつもりらしいしの」

 

 

 水の言葉と視線につられ、僕たちは視線を足下に動かす。そこには、アマが楽しそうに僕の足下にじゃれついている姿があった。

 

「元希よ、お主は様々な人外の者に好かれておる。そなたの中で眠る、リンやシンもそうじゃが、お主らと同じように日本政府によって改造されたキマイラも、お主たちの味方じゃろう。もちろん、学び舎の仲間である炎や水奈たちも、最後までお主たちと戦ってくれるじゃろう。だから元希よ、今はその時に備えてゆっくりと休むが良い。恵理や涼子も、そんな警戒せずとも、攻め入ってきたらワシが報せを送る故、今は目の前の事に備えるんじゃな」

 

 

 水が何のことを言っているのか、僕には分からなかったが、言われた恵理さんと涼子さんは静かに、だが力強く頷いていた。

 

「ではな、主様。帰りは特別にワシが転送してやろう」

 

「えっ……水って転送魔法使え――たみたいね」

 

 

 質問の途中で飛ばされ、次の瞬間には理事長室にいた。もしかして水は、僕よりも転移魔法が上手なんじゃないだろうかという不安が、僕の中に芽生えたのだった。




人間と比べればそりゃ……

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