何かあれば連絡すると言われてから二日が経った。特に進展がないまま冬休みを過ごすのは、意外と落ち着かないものだが、出された宿題を片付けるにはちょうどいい時間となった。
「ただいまー。漸く分かったわよ。全属性魔法師を生み出そうと言い出した黒幕が」
「あらリーナ。貴女はここら辺一帯を標的としている黒幕を探してたんじゃないの?」
「それが一緒だったから、聞きたいだろう方で言っただけよ。それより、元希ちゃんは?」
「そこにいるじゃない。今集中して気配を消してるから、ちょっと見辛いのかもしれないけど」
気配は消してるけど、存在は消してないんだけどな……まぁ、僕たち魔法師は、視界で捉えるよりも感覚で捉える方が多いから、気配を消されると気づきにくいというのは確かにあるかもしれない。
「それで、私たちのような存在を生み出した元凶っていうのは、何処のどいつだったの?」
「現魔法師協会日本支部長の弦間喜三郎って爺さんよ。今年で百二十歳とか言われてる」
「……随分と大物ね」
その人の名前は、僕も聞いたことがあった。弦間喜三郎は、日本の魔法師の為に尽力し、日本魔法師界の父とも呼ばれる魔法師だ。そんな人が、僕たち全属性魔法師を生み出したとでも言うのだろうか? もしそうなら、いったい何のために?
「弦間喜三郎が八十歳を超えた辺りで、自分の死をどうにかして避けたいと研究を始めて、その副産物として生まれたのが全属性魔法師、つまり貴女たちの元となった魔法師らしいのよ。その魔法師は調整と呼ばれる実験に耐えられず死んでしまったらしいのだけど、その遺伝子を使い他の魔法師との間に子を成そうとしたの。その実験を繰り返た結果、最初の成功例となったのが恵理、貴女よ」
「つまり、私の次に成功したのが涼子ちゃん、三回目の成功例が元希君と言う事なの?」
「恵理と涼子の元となった遺伝子の出どころは一緒。元希ちゃんは別みたいだけどね」
「どういうこと?」
リーナさんの話に、恵理さんは首を傾げた。遺伝子の出どころが違うと言われても、元となる遺伝子は一つではないのだろうか?
「こういう言い方もあれだけど、失敗例からも遺伝子は取れたのよ。調整に耐えられなかっただけで、全属性魔法師として生まれたのには変わりなかったから」
「つまり、調整され死んでしまった魔法師から遺伝子を取り出し、別の魔法師と掛け合わせたって事なのね」
「そう言う事。遺伝子実験なんてそんなものでしょうが、人間でそれをやっていい訳はないわね。だから世界的にそう言った実験施設は存在していない事になってるの。そう言う理由で、私も調べるのに時間が必要になったんだけど」
「それで、その弦間喜三郎が霊峰学園を襲う理由は?」
「成功例である恵理、涼子、元希ちゃんの三人が揃っているから、らしいんだけど……多分この事を嗅ぎ付けられ殺されそうになる前に、三人を殺したかったんじゃないかな。実際に日本支部を使っての嫌がらせなど、弦間喜三郎の命令だったみたいだし」
リーナさんの話を聞いて、僕たち三人は大した理由も無く襲われていたのかと、ため息と共に日本魔法師界の父に呆れ、そして何とかしてこのくだらない茶番みたいなことを終わらせようと心に誓ったのだった。
とりあえず終わらせるまで頑張ります