ここら一帯を狙う犯人が、今年百二十歳を迎えると言われている、日本魔法師界の父と呼ばれる弦間喜三郎であると判明し、僕たちはどう攻撃に出るかを考えていた。
「相手があの爺さんだったなら、大家四家が日本支部につかざるを得なくなった理由も納得するわね」
「魔法大家は、かつてあの爺さんが救ったとも言われていますからね」
「どういうことですか?」
詳しい事が分からない僕は、恵理さんと涼子さんの話の腰を折って質問した。二人は笑顔で僕の質問に答えてくれた。
「魔法大家は昔、お取り潰しになるかもしれなかったのよ」
「大家とは名ばかりで、大した魔力も持たない人が何代か続けて当主になったばかりに、日本政府から用無しと判断されかけたの。それを当時まだ十代だった弦間喜三郎が日本政府と全面的に戦う覚悟で魔法大家を救い、その後で魔法大戦が勃発して魔法大家の当主を率いて日本を勝利に導いたのです」
「なるほど……そんな過去があるのならば、魔法大家の四家が日本支部――いや、弦間喜三郎に味方するのも納得です」
恩義を大事にしているのだなと感心する一方で、これではどう頑張っても炎さんたちは、こちらに味方したら家族と戦うしかなくなってしまうではないかと絶望する。出来る事なら家族で争うなどという、実に阿呆らしい事は避けたかったんだけど……
「あの爺さん、一般社会にも顔が利くらしいから、あのメタボハゲを裏で操ってたのも爺さんでしょうね」
「この辺りを地盤とする国会議員を操って、あのメタボハゲを躍らせてたってわけですか」
「随分と厄介な相手がいたものね……」
「実際、弦間喜三郎の戦力はどのくらいなのか、リーナさんは分かりませんか?」
「そうねぇ……」
のんびりとお茶を飲んでいたリーナさんに、僕は敵側の戦力を尋ねた。
「日本魔法師界の頂点にいるくらいだから、とりあえず日本支部にいる魔法師全てはあちら側に付くでしょうね。それから、魔法大戦で弦間喜三郎に負けた、ロシア・中国・韓国といった諸外国の魔法師も、最悪向こう側について三人を襲いに来るかもしれないわね」
「アメリカは?」
「私を捕まえるという名目で来るかもしれないわ。弦間喜三郎はアメリカにも顔が利くから」
「どれだけ顔が広いんですか、そのおじいさん……」
日本中の魔法師が敵というだけでも大変なのに、まさか国外にも顔が利くとは……このままでは戦力差で圧殺されてしまうかもしれない……
『元希、私たちは貴方の味方です。貴方の中で十分に回復させていただきましたので、十分に戦力になると思いますよ。もちろん、この愚弟もね』
『ですから姉上、その「愚弟」というのは止めていただけませんか?』
『止めてほしくば、元希の因縁の相手との戦いに尽力し、そして元希に勝利をもたらしなさい。そうすれば考えてあげなくもないですよ』
『それは考えないと言っているのと同じなのでは?』
僕の中でリンとシンが会話を始めたが、これはこれで頼もしい援軍が期待できるようになった。他にも、僕の召喚獣たちも戦ってくれるだろうし、人間だけが戦力じゃないというところを見せつけてやろうと心に決めた。炎さんもキマイラがいるし、水も味方してくれるだろうしね。
まぁ、チート三人いるんで、何とかなるかな……