弦間喜三郎が黒幕と分かってから、数日が過ぎた。今のところ水からの連絡はないし、僕たちが張った結界内に侵入した形跡もない。まぁ、僕たちと同じようにこっそりと忍び込めば、形跡を掴ませないで侵入する事は可能なんだけどね。
「元希君、日本支部に動きがあったわ。殆どの魔法師を引き連れて、この霊峰学園目指して進軍してきたわ」
「一気に終わらせるつもりなんでしょうか?」
殆どの魔法師と言う事は、他所の警備などで来られなかった魔法師を除く全員と言う事だろうし、それだけの魔法師を集めたと言う事は、あまり時間を掛けたくないという現れだと僕は理解した。
「リーナからの報告だと、敵数はおよそ二千。こちらはかき集めても百と言ったところね」
「およそ二十倍……学生たちは中立を決め込むと報告が来てるから、百も行かないわね」
「炎さんたちには報告するんですか?」
両親や家族は政府側に付くと言っているのだから、出来る事なら中立でいてもらいたい。だけども炎さんたちが手伝ってくれれば、これほど心強い事は無いのだ。
「一応連絡はしたけど、出来る事なら動かないでいてとも言っておいたから」
「そうですか」
これでいよいよ戦力差が酷い事になってきたな……神や召喚獣を合わせても、この戦力差は絶望的と言えるだろうし、味方してくれると言ってくれた魔法師さんたちが、本当にこちら側に付くかも定かではない。何せこれだけの戦力差なのだ。数に怯えて寝返ったり中立を決め込む可能性だって十分に考えられる。
「とりあえず、こちらの戦力として確定してるのは、私たち三人とリーナ。後は召喚獣たちね」
「私も手伝いますよ、理事長先生」
「アレクサンドロフさん? 貴女は待機だと……」
「私は日本政府に恐れる必要はありませんから」
「そっか。バエルさんはロシア人、日本政府の圧力は関係ないんだね」
「ロシアが相手だろうが、私はこちらの味方になりますよ」
心強い援軍に、僕は思わず泣きそうになった。バエルさんの魔法があれば、ある程度の進軍を阻む事が出来るし、いざとなれば僕たちと合わせて四人で敵を凍らせることも可能だ。
「それじゃあお願いするけど、危なくなったらすぐに元希君と二人で逃げる事。いいわね?」
「分かりました」
「何言ってるんですか! 僕だって最後まで……」
「少しは大人の言う事を聞いてください、元希君。これは私と姉さんと日本政府との因縁が産んだといっても過言ではない争いなのですから、元希君とアレクサンドロフさんを巻き込むわけにはいきません」
「僕もその因縁の中にいるはずです。決着をつけるなら僕も一緒に」
二人と日本政府との因縁とは、全属性魔法師であることを不気味がった日本政府の魔法師たちが、恵理さんたちを「化け物」呼ばわりした事から端を発しているあれだろう。だったら僕も同じ全属性魔法師なのだから、関係があると思う。
「元希さんが残るのでしたら、私も最後までお付き合いしますからね」
「……好きになさい」
恵理さんが説得は不可能と諦めたようで、僕たちも最後まで戦う事が決定した。戦力差は大きいけど、こちらは結束力で勝負するんだ!
味方の殆どは召喚獣や式神……